昨日の続きです。最近見た映画、または大分前に見たけど感想を書きそびれていた映画について、ここらでまとめて感想を書き記しておきます。
久々の東映マーク!と盛り上がる記事をたくさん目にしたので、てっきりやくざ映画と思い込んでいたら、実はアメリカ映画によくあるダーティ刑事のバディものなのであった。邦画の新作封切でこういったジャンルの良作にめぐり合えるのは嬉しい。Vシネ時代に戻ったかのように生き生きと暴力刑事を演じる役所も良いが、相棒を務める松坂桃季が予想以上に上手かった。ピエール瀧、石橋蓮司、江口洋介ら助演陣もみな楽しそうに演じていて良かった。続編にも期待。
(『孤狼の血』 監督/白石和彌 脚本/池上純哉 撮影/灰原隆裕 音楽/安川午朗 原作/柚月裕子 出演/役所広司、松坂桃李、真木よう子、ピエール瀧、石橋蓮司、江口洋介、音尾琢真、駿河太郎、中村倫也、阿部純子 2018年 126分 日本)
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花沢健吾の同名コミックを、『GANTZ』の佐藤信介が実写化したホラー・アクション。原作はちゃんと読んだことが無いので、どれくらいテイストが再現されているのかは分からない。大泉洋、有村架純、長澤まさみといったホラーとは縁遠いイメージのメジャーな出演者の顔ぶれに、ヌルい映画になっているかと思いきや、(邦画にしては)かなり大掛かりなパニック描写とハードなゴア描写の連続で驚いた。外国映画に負けないゾンビ映画を作るのだ!という作り手の気合を感じさせる。じゃあ面白かったかと言うとそういう訳でも無いのが難しいところで、ちゃんとゾンビ映画しているからといってそれだけではあんまり楽しくないのだった。俺って実はそんなにゾンビ映画が好きじゃないのかなと思ってしまった。
(『アイアムアヒーロー』 監督/佐藤信介 原作/花沢健吾 脚本/野木亜紀子 撮影/河津太郎 音楽/ニマ・ファクララ出演/大泉洋、有村架純、長澤まさみ、吉沢悠、岡田義徳、片瀬那奈、徳井優 2015年 127分 日本)
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これまた大ヒットコミックの実写化。こちらも原作は断片的にしか読んだことがないので、どこまでテイストが再現されているのかは不明。断片から想像するに、本格SFというよりは、「異常進化したゴキブリと昆虫の特殊能力を持つ戦士たちの決闘」に主眼が置かれたアクション(正に少年漫画の王道を往く)テイストが濃厚なのではないかと思う。人間の屑呼ばわりされるような奴らが結束し、体制に決死の反撃を試みる・・・ならば三池監督の出番は大いにありと思われ、日本版『ゴースト・オブ・マーズ』のごとき一大活劇に期待は高まったのだが・・・。特殊メイクも、SFXも、何もかもがとにかく雑で、正にやっつけ仕事と呼ぶに相応しい仕上がりであった。三池監督は原作ものを延々と切れ間無く撮り続けているので、業界的なニーズは確かにあるんだろうが、ノッて撮っている時とそうでない時の差が大き過ぎるよなあ。『日本黒社会』の頃の感動はもうあり得ないのか。
(『テラフォーマーズ』 監督/三池崇史原作/貴家悠、橘賢一 脚本/中島かずき 撮影/山本英夫 音楽/遠藤浩二出演/伊藤英明、武井咲、山下智久、山田孝之、小栗旬、ケイン・コスギ、菊地凛子、加藤雅也、小池栄子、篠田麻里子、滝藤賢一、太田莉菜、福島リラ 2016年 108分 日本)
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何気なく点けたTVで、偶然目にした三池監督の近作『ころがし屋のプン』。NHK-Eテレのミニ番組「プチプチ・アニメ」の20周年を記念して制作されたというコマ撮り短編アニメーション。ふんころがしのプンが、丸いものなら何でも転がしまくり、やがて地球を転がすに至るという勢い重視の実に三池らしい内容であった。
(『ころがし屋のプン』 監督/三池崇史(アニメーション:稲積君将) 音楽/遠藤浩二 出演(声)/三池崇史、小桜エツコ、豊永利行、千菅春香 2016年 日本)
詩人の福間健二氏が石井輝男監督にロング・インタビューを行った濃密な一冊『石井輝男映画魂』(1991年)を再読。公開当時の批評も併録した詳細なフィルモグラフィーが嬉しい。新東宝、東映をはじめ映画会社を渡り歩き、その後はインディペンデントで映画製作を続けた石井監督。本書はデビュー作から、1991年の東映Vシネマ『ザ・ヒットマン 血はバラの匂い』までをフォローしているが、この後も遺作『盲獣vs一寸法師』に至るまでフィルモグラフィーを更新し続けた。TVやVシネまで含めると膨大な作品数にのぼり、とても全作は追いきれていない。結構見てるはずだと思ってたが、ざっと数えて85本(!)の監督作の内、見たのはたった22本で、3分の1もフォローできていなかった。高倉健があまり好きではないということもあって、東映時代大量に作られたコンビ作をほとんど見ていないのだった。
という訳で、『網走番外地』(1965年)をレンタルして鑑賞。恥ずかしながら初見である。1997年の9月、今は亡き新宿昭和館で『日本暴力列島 京阪神殺しの軍団』を見に行った時の同時上映が『網走番外地』だった。あの時は『京阪神』でダウナーな気分に落ち込んでしまって、『網走』を見ないまま劇場を出てしまったのだった。さておき、初めてちゃんと見た『網走番外地』は極めて完成度の高い一級のアクション映画であった。今見ても映像の切れ味、俳優たちの演技、アクションの迫力(トロッコチェイス!)等々、全く古びていない。もっと早く見ておくんだったなあ。高倉健は好きな俳優ではないが、まだチンピラっぽさを残した素直な存在感の橘役はとてもいい。凛々しい演技の丹波哲郎、ヒールに徹した南原宏治、安部徹、伝説の犯罪者「鬼寅」役で場をさらう嵐寛寿郎・・・。濃い男優たちのアンサンブルは刑務所映画の醍醐味。看守相手にお祭り騒ぎになる場面などそれぞれのキャラが立ちまくりで最高だった。
(『網走番外地』 監督・脚本/石井輝男 撮影/山沢義一 音楽/八木正生 出演/高倉健、安部徹、丹波哲郎、田中邦衛、南原宏治、嵐寛寿郎 1965年 92分 日本)
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『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』(本多猪四郎)
切通理作氏による評伝『本多猪四郎無冠の巨匠』(2014年)を読んだら、どうしても怪獣映画が見たくなり、未見だった『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』(1966年)鑑賞。前作『フランケンシュタイン対地底怪獣』がホラーとSFと怪獣映画のミクスチャー(というより「野合」という感じ)でなかなか面白かったので、期待して見始めた。海に棲むガイラが船を襲う前半は完全にモンスター映画の演出で、当時見てトラウマになった子供も多かろう。喜八作品でもお馴染みの東宝脇役俳優、山本廉や沢村いき雄らが被害者になる。空港襲撃の場面では被害者が食われるのがはっきり分かる演出もあり、なるほど元祖『進撃の巨人』か。山中湖での攻防あたりまではかなり面白かったが、後半は延々怪獣プロレスが続いてお話が停滞してしまうので(そしてそのまま海底火山の爆発で無理やり終わってしまう)、若干退屈した。一番印象に残ったのは水野久美が崖から落ちそうになった場面の妙に色っぽい表情だったりする。汗ばんだ苦悩の表情と脇の下。しかるに映画におけるスペクタクルって何だろうなと思う。
(『フランケンシュタインの怪獣 サンダ対ガイラ』 監督/本多猪四郎 脚本/馬渕薫、本多猪四郎 撮影/小泉一 音楽/伊福部昭 出演/ラス・タンブリン、佐原健二、水野久美、田崎潤、中村伸郎、伊藤久哉、田島義文 1966年 88分 日本)
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この項続く。