Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『マッキントッシュの男』(ジョン・ヒューストン)

 

 ポール・ニューマン主演のスパイ・サスペンス『マッキントッシュの男』(1973年)鑑賞。大昔にローカル局の吹替洋画番組で見て以来の再見。監督ジョン・ヒューストン、脚本は監督デビュー前のウォルター・ヒル

 

 ヒューストン作品を全て見ている訳ではないけど、多作でジャンルも多岐に渡るそのフィルモグラフィーを眺めると、どうもノってる時とそうでない時の差が激しい印象だ。本作は後者か。サスペンス映画としては非常に平板で、主演ニューマンもこれという見せ場がない。そもそもニューマンはマッチョなヒューストンとはソリが合わなそうだ。ドミニク・サンダは登場場面から強烈な異物感があり魅力的だった。ジェームズ・メイスンはいささかタイプキャストのきらいがあり、議会で演説している冒頭の場面から「こいつが黒幕」臭がプンプンしていた。

 

 本作で良かったのはモーリス・ジャールのエキゾチックな音楽。どことなく80年代邦画の梅林茂の音楽を連想してしまった。繰り返し流れるジャールのテーマ曲が映画のムードを盛り上げていた。また、後半の舞台となるアイルランドの風景がいい。悪路での不器用そうなカーチェイスは面白い見せ場だった。刑務所の場面で茹で卵が出てくるのは脚本ヒルから『暴力脱獄』への目配せかな。