Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

moonriders LIVE2022 @日比谷野外大音楽堂

 楽しかった日曜のムーンライダーズ野音が終わって、日常に戻ると、あれこれ追いまくられてあっという間に水曜日。でもいつもと違いライヴの快い余韻がさざ波のように身体に残っていて、セットリストのメモを見ながら演奏を思い出しているだけで気分が軽くなるというか、日常の辛さ重さをやり過ごすことが出来ました。やっぱりいいよねライヴって。やっぱり神だったよねムーンライダーズって・・・。

 

 ムーンライダーズの生演奏は、慶一さんのミュージシャン生活45周年記念ライブ(2015年)以来、ワンマンとなると『Ciao! THE MOONRIDERS』(2011年)以来か。彼らに限らず、コロナ禍でイベントからすっかり足が遠のいてしまって、本当に久しぶりのライヴでした。今回はコロナ禍で座席は1席空けてのソーシャルディスタンス仕様、声出しは禁止で拍手のみという制約がありました。幸い天候に恵まれ、陽が落ちてからもそんなに寒くなかった。靄がかかってはいましたが、ちゃんと月も見えて。と書いているだけで、「月夜のドライブ」の名演が思い出されて泣けてきます。       

 

セットリスト

「いとこ同士」(収録アルバム『ヌーベル・バーグ』1978年)

「We are Funkees」(『Dire Morons TRIBUNE』2001年)

「モダンラヴァーズ」(『モダーン・ミュージック』1979年)

「I hate you and I love you」(『Tokyo 7』2009年)

「ゆうがたフレンド(公園にて)」(『MOON OVER the ROSEBUD』2006年)

檸檬の季節」(『マニア・マニエラ』1982年)

「BLDG(ジャックはビルを見つめて)」(『アマチュア・アカデミー』1984年)

「S・A・D」(新曲)

「Smile」(新曲)

イスタンブール・マンボ」(『イスタンブール・マンボ』1977年)

「ディスコ・ボーイ」(『モダーン・ミュージック』1979年)

「駄々こね桜、覚醒。」(新曲)

「月夜のドライブ」(はちみつぱい『センチメンタル通り』1973年)

「G.o.a.P.(急いでピクニックへ行こう)」 (『アマチュア・アカデミー』1984年)

「Flags」(『Dire Morons TRIBUNE』2001年)

「スカーレットの誓い」(『マニア・マニエラ』1982年)

「シリコン・ボーイ」(『A.O.R.』1992年)

「ヤッホーヤッホーナンマイダ」(『P.W Babies Paperback』2005年)

「黒いシェパード」(『ムーンライダーズの夜』1995年)

アンコール

「ジャブ・アップ・ファミリー」(『ヌーベル・バーグ』1978年)

「くれない埠頭」(『青空百景』1982年)

 

 ムーンライダーズは46年という長い活動期間の中でたくさんの曲を発表しています。ベスト盤は何枚もあり(残念ながら「グレイテスト・ヒッツ」ではない)、ライヴの定番曲はあれど、一筋縄ではいかない人たちなので、今回はどの曲を演ってくれるだろうと楽しみにしていました。ちなみに、20周年記念公演の時はアルバムの1曲目を順番に演奏するという趣向でした。

 

 メンバーがリラックスした様子で入場したのち、ライヴはアルバム『ヌーベル・バーグ』収録の人気曲「いとこ同士」からスタート。彼らの中では比較的ストレートな熱っぽい曲です。続いては『Dire Morons TRIBUNE』からユーモラスな「We are Funkees」。これは珍しい曲が来たなあと思っていると、次は「モダンラヴァーズ」。続いては『Tokyo 7』から「I hate you and I love you」。この辺で、ああこれはベスト盤的な曲とマイナーな曲を交互に演るのかなと。ならば今度はどの曲を演ってくれるのだろうかとマニア心が燃え上がります。

 

 丁度夕刻の時間帯となり、このタイミング、この場所で聴くに相応しい「ゆうがたフレンド(公園にて)」。「金のない人、手を挙げて―」コールにはみんな手を挙げてましたね。いや俺も。この次は何と『マニア・マニエラ』から「檸檬の季節」、そして『アマチュア・アカデミー』から「BLDG」が!まさか生でこの曲が聞けるとは。野音のステージの向こうにそびえるビルが違って見えてきます。『アマチュア・アカデミー』からはもう1曲「G.o.a.P.」も演ってくれました。個人的に『アマチュア・アカデミー』は一番好きなアルバムなので嬉しかったなあ。

 

 続いて4/20リリースのニューアルバムから新曲を2曲。「S・A・D」「Smile」。後に披露された良明さんの「駄々こね桜、覚醒。」もそうでしたが、曲の輪郭がはっきりとしていてポップ、これは『Tokyo7』ばりに抜けの良いアルバムが期待できるかもしれないなと。良明さんはライダーズで初めて採用された曲だという「ディスコ・ボーイ」も演ってくれました。最初期の曲と、40数年を経ての最新曲ですよ。

 

 初期無国籍路線の代表作「イスタンブール・マンボ」、はちみつぱい時代の「月夜のドライブ」、『Dire Morons TRIBUNE』から荘厳な「Flags」・・・。これら混沌としてスケールの大きい楽曲ではライダーズの高い演奏力が堪能出来ます。「スカーレットの誓い」、『A.O.R.』から「シリコン・ボーイ」(間奏がいかにもライダーズっぽくて楽しい)、そして『P.W Babies Paperback』から反戦歌「ヤッホーヤッホーナンマイダ」で会場の熱狂は頂点に。時局にモノ申すにもユーモアを忘れない彼らだけに、「戦争やめろ!」「いいたいことはそれだけだ!」のストレートな(そして延々と続く)シャウトには特別な迫力がありました。本編ラストは『ムーンライダーズの夜』から「黒いシェパード」。アンコールはこれまた意外な「ジャブ・アップ・ファミリー」、オーラスは名曲「くれない埠頭」・・・。

 

 駆け足で振り返ってみました。70年代からゼロ年代にかけて各年代からの選曲、加えて新曲が3曲で全21曲。アンコール含め約2時間半くらい。人気曲と、かなり珍しい曲が交互に演奏されて、マニア心も満足。とにかく素晴らしいライヴでした。ホーンセクション他サポートメンバーも存在感がありました。慶一さんは「また近いうちお会いしましょう!」とMC、ニューアルバムのリリース後にまた何かやってくれるかもしれません。楽しみ。