Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『サン・スーシの女』(ジャック・ルーフィオ) 

 

 「没後40年 ロミー・シュナイダー映画祭」にて、『サン・スーシの女』(1982年)鑑賞。ロミー・シュナイダーが出ていること以外、ほとんど予備知識なく見ました。

 

 人権擁護委員会の代表を務めるマックス(ミシェル・ピコリ)が、隠し持った銃で大使を射殺するという事件が起きた。逮捕されたマックスは留置所へ面会に来た妻リナ(ロミー・シュナイダー)に、犯行に至る過去の出来事を語り始めた。1930年代のベルリン。ナチの突撃隊に父親を殺された少年時代のマックスは、エルザ(ロミー・シュナイダー2役)とミシェル(ヘルムート・グリーム)夫妻に引き取られる。ナチスがさらに勢力を伸ばし政情不安が強まる中、マックスはエルザとともにパリへ逃れるが・・・。同じ粗筋からハリウッド映画ならば、身分を偽りナチスの手を逃れて国外へ逃亡するサスペンスや、ベルリンとパリを結ぶ列車が舞台の活劇になったかもしれません。本作はそっちの方向へは向かず、ざっくり言うならば、戦時下ナチスに翻弄された人々の悲劇を描くメロドラマでした。         

 

 解説によると、ロミー・シュナイダーは怪我や病気、最愛の息子を不慮の事故で亡くすなど不幸が重なって、本作の撮影は何度も延期となったそうです。残念ながら本作が遺作となりました。本作では夫との再会を果たすため奔走する情熱的な姿、失意で酒に溺れた虚ろな姿、マックス少年を優しく見つめる表情、ステージで歌う場面、等々、様々な表情を見せてくれます。中でもドレスアップしてマックス少年とレストランに繰り出す場面、ジョルジュ・ドルリューの音楽が高鳴り、艶やかなドレス(彼女以外にはかなり着こなしが難しそうな!)で登場する場面など素晴らしい。そして彼女がマックスの妻リナと養母エルザの2役を演じることが、本作のサスペンスの肝となっています。

 

 ラストシーン、裁判を終えたリナとマックスにかぶる非情な字幕からは、80年代になってなお冷めやらぬナチスへの怒りが感じられました。そして自らの過去を暗殺行為で清算しようとしたマックスの姿は、先ほど我が国で起きたあの事件を連想してしまって辛かった。

 

 共演はミシェル・ピコリ。しかしミシェル・ピコリフィルモグラフィーは凄いなあ。フランスのあらゆる監督の映画に出て、あらゆる女優と共演してるんじゃないかと思えるくらい。ジャン=ルイ・トラティニャンといい勝負ではないか。エンディングクレジットにジャン・レノの名前があったけど、出ていたの気がつかなかった。何の役だったのかな。                           

 

『サン・スーシの女』La passante du Sans-Souci 

監督/ジャック・ルーフィオ 脚本/ジャック・ルーフィオ、ジャック・キルスネル 撮影/ジャン・パンゼール 音楽/ジョルジュ・ドルリュー 

出演/ロミー・シュナイダーミシェル・ピコリ、ヘルムート・グリーム、ドミニク・ラブリエ、ウェンデリン・ウェルナー 

1982年 フランス/西ドイツ