- 出版社/メーカー: キングレコード
- 発売日: 2011/09/07
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『追想』 LE VIEUX FUSIL
監督/ロベール・アンリコ
脚本/パスカル・ジャルダン 、クロード・ヴェイヨ、ロベール・アンリコ
撮影/エチエンヌ・ベッケル
音楽/フランソワ・ド・ルーベ
出演/フィリップ・ノワレ、ロミー・シュナイダー、ジャン・ブイーズ、マドレーヌ・オズレー
(1975年・102分・フランス)
ずっと見たかったロベール・アンリコ監督『追想』のDVDが発売されたので速攻チェック。イングリッド・バーグマン、ユル・ブリンナー主演の『追想』(1956年)と紛らわしいけれど、全くの別物。主演はフィリップ・ノワレ、ロミー・シュナイダー。原題はLE VIEUX FUSIL(古い銃)、主人公が手にする古い猟銃の事である。
1944年、ドイツ占領下のフランス。医師のジュリアン(フィリップ・ノワレ)は戦火の拡大を恐れ、妻(ロミー・シュナイダー)と娘を田舎の古城に疎開させる。数日後、村を訪れたジュリアンは我が目を疑った。教会には村人の死体が散乱し、古城には惨殺された妻子の姿が・・・。怒りに燃えたジュリアンは、城に駐留するドイツ小隊にたった一人で復讐を開始した・・・。
『追想』などという邦題からは何やらノスタルジックな恋愛映画など想像してしまうけれど、実は異色の戦争映画である。何しろ町山智浩氏の名著『トラウマ映画館』で採り上げられているくらいだ。ちなみにタランティーノの『イングロリアス・バスターズ』のネタ元のひとつでもある。
ナチスドイツの小隊が駐留する古城には隠し部屋や抜け道がたくさん設置されている。かつてそこに住んでいた主人公は、抜け道で城内を動き回り、ドイツ兵をひとり、またひとりと殺してゆく。主人公演じるフィリップ・ノワレ(『ニューシネマ・パラダイス』)の温厚そうなルックスと、非情極まりない殺害方法のギャップがインパクト大。本作のバイオレンス描写はかなり残酷で、妻子が殺害される場面では火炎放射機まで・・・。公開当時、甘い邦題につられて戦時下のメロドラマなど期待して見に来た女性観客は腰を抜かした事であろう。
主人公は、ドイツ兵との闘いの合間に妻との甘美な日々を回想する。『追想』は回想場面がたびたび挿入されるという語り口のせいで、活劇映画としてはかなりいびつな仕上がりとなっている。しかし、そのいびつさ故に『追想』は印象深い映画となっているようだ。甘美な回想シーンのフラッシュバック(ロミー・シュナイダーの輝くばかりの美しさ!)と、残酷な戦闘シーンが交互に描かれる事でインパクトはさらに大きくなっている。
主人公と娘(眼鏡をかけた野暮ったい感じ)がそっくりで、妻は輝くばかりに美しい。娘は父親似なんだなあ、母親に似なくて残念・・・などと思っていると、実は主人公は再婚で娘は連れ子だった事が分かる。また、ドイツ兵との戦闘で眼鏡を壊してしまった主人公が、古城に忍び込んで寝室から(娘の?)眼鏡を持ち出して装着する。等々の細やかな描写も味わい深い。そして何と言ってもフランソワ・ド・ルーベによる音楽が素晴らしい。
さておき、古城を舞台にした異色の戦争映画として、シドニー・ポラック監督『大反撃』と二本立てするといいかもだ。