Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『アメリカン・スリープオーバー』(デヴィッド・ロバート・ミッチェル)

 

 

 アマプラにて、デヴィッド・ロバート・ミッチェル監督『アメリカン・スリープオーバー』(2010年)鑑賞。『イット・フォローズ』『アンダー・ザ・シルバーレイク』のミッチェル監督の劇場デビュー作。

 

 内容については全く予備知識のないままに鑑賞。2作目、3作目のイメージで何となくサスペンス映画なのかなくらいの感じで見始めたら、意外や直球のティーン・ムービーだった。80年代『ボーキーズ』的な性春の狂騒感も、90年代ラリー・クラーク的な生臭さも無く、とても静かな世界が展開する。個人的にゼロ年代以降のこのジャンル(学園もの、青春映画)は全く不勉強なので、事件性のない本作の静けさが今風なのか特別なのかは分からない。

 

 中学のクラスメイトが寝袋を持って集まり行うお泊り会=スリープオーバー(そんな習慣があるのですね)の一夜。それぞれの想いを胸に集まった少年少女の群像劇だ。出て来る女子は生き生きとしてて自己主張が激しそうだけど、男子は皆大人しい。アッパーな体育会野郎が出てこないのが珍しい。男子が集まって安いスラッシャー映画見てヘラヘラしてる場面には既視感があるな。おっぱいが見えるカットをリプレイしたりして馬鹿っぽい。

 

 後の『イット・フォローズ』『アンダー・ザ・シルバーレイク』のイメージから、少年少女たちが夜中の散歩や廃墟に出かける場面で何か酷いことが起きるんじゃないかとハラハラした。突然暴力が吹き荒れてぷっつり終わったりするのではないかと。幸い本作はそういう映画じゃなかった。とりたてて何も事件は起きないままにお泊まり会の一夜が明けて、郊外の住宅街に差す朝日のカットが良い。翌日は市内でパレードが行われる。それぞれの朝を迎えた登場人物たちがパレードの群衆の中に紛れている。パレードで一応この映画の主人公と言える女の子(クレア・スロマ)と仲間たちが披露する不器用な(でも楽しそうな)ダンス。うーん、良いじゃないですかこれは。

 

 中学生、夜のプール、頻出する水のイメージと、本作と共通する要素が多いのが『台風クラブ』。朴訥と呼べるくらいに普通さが際立つ本作と、過激な『台風クラブ』。二本立てで見比べてみるのも面白そうだ。