『バックマン家の人々』 PARENTHOOD
監督/ロン・ハワード
脚本/ローウェル・ガンツ、ババルー・マンデル
撮影/ドナルド・マカルパイン
音楽/ランディ・ニューマン
出演/スティーヴ・マーティン、メアリー・スティーンバージェン、ダイアン・ウィースト、リック・モラニス、トム・ハルス
(1989年・124分・アメリカ)
ロン・ハワード監督の旧作『バックマン家の人々』(1989年)を見る。
頑固な父親フランク(ジェイソン・ロバーツ)を家長とするバックマン家。長男ギル(スティーヴ・マーティン)と妻(メアリー・スティンバージェン)は、内向的な性格で学校に馴染めない息子に悩んでいる。長女ヘレン(ダイアン・ウィースト)はシングル・マザーで、人見知りの息子と反抗的な娘に悩んでいる。次女のスーザン(ハーレー・ジェーン)は、幼い娘に英才教育を施す夫(リック・モラニス)に違和感を覚えている。ある日、一家で一番の問題児である末っ子のラリー(トム・ハルス)が3年ぶりに実家に戻ってきたが・・・。
DVDのジャケ写を見て、もっとほのぼの系のファミリー映画かと思っていたら、完全に大人向けの作品であった。アメリカ郊外に住むバックマン家の人間模様を通し、夫婦や親子関係の普遍的な悩みを描くのがテーマであろうか。スケッチ調の描写に終始するので、個々のキャラクターに対して若干踏み込みが足りない気がした。特に、末っ子に対して何のフォローもないまま終わってしまう辺りはちょっと冷淡過ぎるような印象だ。ロン・ハワードにしては若干演出が空回っていると言う気がしたなあ。コメディタッチとはいえ、ちょっと下品だったし。
映画の見所は、スティーヴ・マーティン(アメリカの関根勤)をはじめとする個性豊かな俳優たちの共演だ。特にマーサ・プリンプトンとキアヌ・リーヴスのバカップルには笑った。そういえば『スピード』以前のキアヌは、『ビルとテッド』シリーズとかこういう頭の悪そうなキャラクターが得意だった。馬鹿なんだけどいい奴、という等身大の役柄が微笑ましい。
音楽はランディ・ニューマン。すっかり「アメリカンな物語ならこの人」というイメージが定着しているが、本作は音楽がいささかトゥーマッチな気がした。曲が悪いわけではなくて(まさか!)、使い方を間違えてるというか。何だか音楽で無理やり「いい映画でしょう」と盛り上げてるみたいな印象を受けてしまった。
ロン・ハワードは『アメリカン・グラフィティ』等で俳優として活躍した後、ロジャー・コーマン製作総指揮による『バニシングIN TURBO』(1977年)で監督に転身。さすがはコーマンの元でスタートしただけあって、『スプラッシュ』(1984年)、『コクーン』(1985年)、『ウィロー』(1988年)、『バックドラフト』(1991年)、『ダビンチ・コード』(2006年)、『ビューティフル・マインド』(2001年)等々、ジャンルにこだわらず娯楽映画を撮り続け、ハリウッドの第一線で活躍している。『バックマン家の人々』はいまいち楽しめなかったけれど、個人的には『ザ・ペーパー』(1994年)、『アポロ13』(1995年)、『フロスト×ニクソン』(2008年)で見せた手際良い演出が印象に残っている。ちなみに、シャラマン作品や『スパイダーマン3』『ヒア・アフター』のブライス・ダラス・ハワードはロン・ハワードの娘だ。
さておき、『バックマン家の人々』と同時上映するなら、『ガープの世界』(ジョージ・ロイ・ヒル)と『バーバー』(コーエン兄弟)だ。車内での危険な行為は止めましょう。