Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『モダーン・ミュージック MODERN MUSIC』(ムーンライダーズ)


 1979年10月にリリースされたムーンライダーズ4枚目のアルバム『モダーン・ミュージック MODERN MUSIC』。宣伝コピーは「オレ達の心 いつもNew Wave!」だって。何てストレートな。


 収録曲は、


 M-1.「ヴィデオ・ボーイ」(作詞・作曲/鈴木慶一
 M-2.「グルーピーに気をつけろ」(作詞/鈴木博文 作曲/岡田徹
 M-3.「別れのナイフ」(作詞・作曲/橿渕哲郎)
 M-4.「ディスコ・ボーイ」(作詞/鈴木博文 作曲/白井良明
 M-5.「ヴァージニティ」(作詞・作曲/鈴木慶一
 M-6.「モダーン・ラヴァーズ」(作詞/鈴木博文 作曲/岡田徹鈴木博文
 M-7.「バック・シート」(作詞・作曲/橿渕哲郎)
 M-8.「バーレスク」(作詞・作曲/橿渕哲郎)
 M-9.「鬼火」(原案/松山猛 作詞/佐藤奈々子鈴木慶一 作曲/鈴木慶一
  (アナログ盤ではM-1〜5がSIDEA、M-6〜9がSIDEB)


 いわゆるテクノポップM-1「ヴィデオ・ボーイ」から幕を開け、テレヴィジョンを思わせる神経症的なギター・サウンドに変貌している。全作から1年も経っていないのにこの変わりようには驚かされる。聴き終えて印象に残るのがM-7「バック・シート」、M-9「鬼火」の2大自殺ソングと言う暗いアルバムだ。全体に陰鬱なムードが漂っていて、ライダーズの中ではあまり聴き返すことのないアルバムではある。中にはAORというかシティ・ポップス路線の曲も混じってたりして、ニュー・ウェイヴ調のアレンジが遊離しているような印象を受ける曲もあり、過渡期だったのかなあと思う。


 M-1「ヴィデオ・ボーイ」はユーモラスな歌詞、サウンドのアレンジ、メディアへの興味、とこの時期のライダーズのイメージを代表する名曲。個人的なベスト・トラックはやっぱりM-6「モダーン・ラヴァーズ」かな。今聴いても普通にカッコいい曲なんで、これがシングル・ヒットしなかったのは不思議だなあ。M-7「バック・シート」はかしぶち氏のソロ・ライヴ盤『LIVE EGOCENTRIQUE』収録のヴァージョン、M-9「鬼火」は『ザ・ワースト・オブ・ムーンライダーズ』収録のディラン調の弾き語りヴァージョンも凄いのでファンなら必聴だ。


 同年のコンサートは、アーカイヴ・シリーズ『Archives Series Vol.2 1979.7.7 at KUBOKODO』(2007年4月リリース)で聴くことが出来る。この時期ライヴではディーヴォのような格好をして、既存の楽曲を解体・再構築して演奏していた。『火の玉ボーイ』から初期の3枚までのお洒落なシティ・ポップス的スタイルから、ニュー・ウェイヴ化していく様子が手に取るように伝わってくる。



モダーン・ミュージック(紙ジャケット仕様)

モダーン・ミュージック(紙ジャケット仕様)