Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『女性上位時代』(パスクァーレ・フェスタ・カンパニーレ)

女性上位時代 HDニューマスター版 [DVD]

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『女性上位時代』 LA MATRIARCA


 監督/パスクァーレ・フェスタ・カンパニーレ
 脚本/パオロ・フェラーリ、オッタヴィオ・ジェンマ
 撮影/アルフィオ・コンチーニ
 音楽/アルマンド・トロヴァヨーリ
 出演/カトリーヌ・スパーク、ジャン=ルイ・トランティニャン、ガブリエル・フェルゼッティ、ジジ・プロイエッティ
 (1968年・94分・イタリア)


 カトリーヌ・スパーク主演のエロティック・コメディ『女性上位時代』(1968年)を久々に再見。恐らく映画そのものよりもトロヴァヨーリのサントラ人気で名高い一作。


 若くして未亡人になったミミ(カトリーヌ・スパーク)は、夫が自分に内緒で秘密の一室を持っていたことを知る。夫はその部屋に女性たちを連れ込み、様々な性の喜びを謳歌していたのだ。ミミは自分のためにその部屋を使うことを決意し、様々な男たちとアバンチュールを繰り広げるが・・・。


 お話は何とも他愛のない艶笑譚。なんだけど、カラフルなファッションと美術、濃い顔の俳優たちの存在感、鬱陶しくない程度に凝った編集、そして愉快な音楽の効果で、ぼんやりと映像を眺めているだけで何とも言えない幸福な気分になれる。特に音楽は、またしても「トロヴァヨーリの音楽を見る」という位に映画と一体化していて素晴らしい。退屈なんだけど飽きのこないこの不思議な感覚は、この時代のイタリア映画ならではって気がするなあ。語りの効率に重きが置かれたハリウッド映画では、なかなかこういう感じに浸れないのだ。


 奔放なヒロインを演じるのは、タレ目ぽっちゃり系のカトリーヌ・スパーク。さすがにティーン・アイドルだった頃の溌剌とした魅力はすっかり失せてしまってるけど、派手なファッションも上手く着こなして役にハマッている。ヒロインのお相手にはジャン=ルイ・トランティニャンフィリップ・ルロワ、フランク・ウォルフなどユーロ・ホラー、マカロニウエスタン好きにはお馴染みの俳優も顔を見せる。中でも、一見堅物の草食系に見えたトランティニャンが意外な骨っぽさを見せる場面が楽しかった。


 数多のアバンチュールを経て、スパークはトランティニャンと再婚する。新居で「痴人の愛」よろしくスパークがトランティニャンに馬乗りして戯れる(この姿勢をして「女性上位」と呼ぶらしい)場面でお終い。まあ、こういうのもたまにはいいんじゃないでしょうか。車の男にナンパされて情事を終えた後、お金を渡されて嬉しそうに受け取っちゃう場面はいかがなものかと思うけど・・・。



女性上位時代

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