Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『ダーティハリー』(ドン・シーゲル)

ダーティハリー 特別版 [DVD]

ダーティハリー 特別版 [DVD]


ダーティハリー』 DIRTY HARRY


 監督/ドン・シーゲル
 脚本/ハリー・ジュリアン・フィンク、R・M・フィンク、ディーン・リスナー
 撮影/ブルース・サーティース
 音楽/ラロ・シフリン
 出演/クリント・イーストウッド、アンディ・ロビンソン、ジョン・ヴァーノン、レニ・サントーニ、ハリー・ガーディノ
 (1971年・103分・アメリカ)


 70年代刑事アクションの金字塔ダーティハリーが「午前十時の映画祭」に登場!本当は昨年春に上映されるはずだったが、震災でプログラムが吹っ飛ばされてしまったのであった。「午前十時」のスタッフの皆さま、ちゃんとリカバリー上映してくれてありがとうございます。上映前に後ろの席に座ってたおじさんたちが「一年待たされたからなあ」と話してましたが全く同感でございます。


 内容については、今さらここにクドクド書き記すまでもないだろう。サンフランシスコ市警の一匹狼ハリー・キャラハン刑事(クリント・イーストウッド)と、サソリ座の殺人者(アンディ・ロビンソン)の死闘を描く。いつも汚れ仕事ばかり担当させられるので“ダーティハリー”(お不潔ハリー)とあだ名される主人公はイーストウッド一世一代の当たり役となり、シリーズ5作目まで製作された。


 『ダーティハリー』を初めて見たのはご多分に漏れずTVの吹替洋画劇場であった。放映される度に見たし、ヴィデオデッキを購入してからは録画して繰り返し見たのに加え、イーストウッド(&山田康雄)信奉者である友人のきゃらはん師が繰り返し繰り返し物真似をしてくれたこともあり、吹替版の印象がとても強い。今回初めて大スクリーンで対面した訳だが、イーストウッドを見ると山田康雄の声が、ジョン・ヴァーノン(市長)を見ると家弓家正の声が、レニ・サントーニ(相棒のチコ)を見ると仲村秀生の声が聞こえてくるようだった。サソリ座の殺人者は言わずもがな。こんな野郎は日本全国に沢山いるのではないかな。


 シャープなシーゲルの技(完璧な構図で位置関係を的確に示す無駄の無い演出)に、70年代特有の翳りとイーストウッドが漂わす西部劇の香りがブレンドされ、唯一無比の空間を作り出す。冒頭の狙撃場面から妖しく響くラロ・シフリンのクールな音楽。銀行強盗(後に『ダーティハリー4』で相棒役を演じるアルバート・ポップウェル)に向かって悠然と歩くハリー・キャラハンの雄姿。ハリーにナイフを突きたてられたサソリ座の殺人者の絶叫がスクリーンを震わせる。すべてが素晴らしい。至福の2時間であった。


 荒々しいタイトル文字、「汚れた英雄か!孤独の狼か!」という宣伝文句も楽しい初公開時のチラシ。裏面に解説を書いているのは双葉十三郎先生だ。