Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

映画感想その7

 最近見た映画、または大分前に見たけど感想を書きそびれていた映画について、ここらでまとめて感想を書き記しておきます。今回はドン・シーゲル編。


『突撃隊』(ドン・シーゲル) 

 初期の戦争映画『突撃隊』(1961年)。第二次大戦末期、ドイツのトーチカが建つ前線突破に一小隊が挑む。出演はスティーヴ・マックィーン、歌手のボビー・ダーリン、ジェームズ・コバーンハリー・ガーディノら。クレジットにはLQジョーンズの名もあったような。戦闘場面にニュースフィルム使ったりする低予算のB級映画だけど、パンチの効いた描写で飽きさせない。暴走するマックィーン、地雷で爆死するコバーン! 好戦でも反戦でもない単なる戦争映画(戦場映画と言ってもいい)。昔TVの吹き替え洋画劇場でこんな映画がよくかかってたなと思う。

(『突撃隊』 HELL IS FOR HEROES 監督/ドン・シーゲル 脚本/ロバート・ピロッシュ、リチャード・カー 撮影/ハロルド・リップスタイン 音楽/レナード・ローゼンマン 出演/スティーヴ・マックィーン、ボビー・ダーリン、フェス・パーカー、ジェームズ・コバーンハリー・ガーディノ 1961年 90分 アメリカ)


突撃隊 (字幕版)

突撃隊 (字幕版)



『殺人者たち』(ドン・シーゲル)

 2人の殺し屋(リー・マーヴィン、クルー・ギャラガー)は、ギャングの金を奪って逃げた元レーサー(ジョン・カサヴェテス)を探し出して殺害する。が、まるで殺されるのを待っていたかのような元レーサーの態度を不審に思った殺し屋たちは、過去の事件を調べ始めるが・・・。原作はヘミングウェイの短編小説。元々はTVムービーだったが、強烈な暴力描写のため劇場公開となったという。久々の再見であったが、実に面白かった。ドン・シーゲルのタイトな演出が素晴らしい。俳優たちも生き生きしていて魅力的。ギラついた若きカサヴェテス、悪女アンジー・ディキンソン、悪役のロナルド・レーガンという脇役も面白いが、この映画は何と言ってもリー・マーヴィンに尽きる。太々しい存在感は素晴らしい。ラスト、金の入った鞄を抱えて通りに歩み出て、ばったりと倒れて絶命する芝居なんて思わず「いよっ、マーヴィン!」と声を掛けたくなるような素晴らしさ。

(『殺人者たち』 THE KILLERS 監督/ドン・シーゲル 脚本/ジーン・L・クーン 撮影/リチャード・L・ローリングス 音楽/スタンリー・ウィルソン、ジョン・ウィリアムズ 出演/リー・マーヴィンロナルド・レーガンアンジー・ディキンソンジョン・カサヴェテス、クルー・ギャラガー 1964年 95分 アメリカ)




『突破口!』(ドン・シーゲル) 

 TVの洋画劇場なんかで何度も見てるにも関わらず、一向に飽きることが無い一級のサスペンス・アクション。メインタイトルCHARLEY VARRICKがめらめらと燃え上がる冒頭から、銀行強盗、マフィアの放った殺し屋の追撃、どたん場の逆転劇まで緊張の途切れる暇が無い面白さ。主人公チャーリーの相棒(アンディ・ロビンソン)、組織の上司(ジョン・ヴァーノン)、太々しい追っ手(ジョー・ドン・ベイカー)、等々キャラクターが皆面白い。中でも、妻を失った痛みを胸に秘め、生き延びる為に淡々と行動する主人公チャーリー(ウォルター・マッソー)が何といっても魅力的だ。ああいうオトナな(プロフェッショナルな)キャラクターが活躍する犯罪映画って最近無いよなあ。単純なマッチョタイプじゃない個性派ウォルター・マッソーが演じてるからこそ滲み出る、人間臭い魅力が素晴らしい。ドン・シーゲル作品で最も好きな1本。

(『突破口!』 CHARLEY VARRICK 監督/ドン・シーゲル 脚本/ハワード・ロッドマン、ディーン・リーズナー 撮影/マイケル・C・バトラー 音楽/ラロ・シフリン 出演/ウォルター・マッソー、ジョン・ヴァーノン、アンディ・ロビンソン、シェリー・ノース、ジョー・ドン・ベイカー 1973年 111分 アメリカ)




『ドラブル』(ドン・シーゲル) 

 封切当時の「スクリーン」誌でマイケル・ケインイングラムを乱射するスチールを見て以来、ずっと見たかった1本。英国の諜報部員(マイケル・ケイン)が息子を誘拐され、家庭と組織の狭間で苦悩する。物凄く地味いいいいいな映画であった。主人公は終始クールな表情を崩さないが、ハリー・キャラハンのような超越的人物ではなく、クールさ(と言うより無表情)は訓練の賜物。職業病と言ってもいいかもしれない。どちらかといえば人間臭いキャラクターで、それ故に、奥さんと連携する場面がとても面白かった。原題のTHE BLACK WINDMILLとはクライマックスに登場する風車小屋。貯めに貯めてここでようやくアクションが炸裂、短い場面ながらさすがはドン・シーゲル、迫力のある銃撃戦を見せてくれる。悪役ジョン・ヴァーノンの死に様(股間を撃たれる!)には笑った。ドナルド・プレザンスはお気の毒。

(『ドラブル』 THE BLACK WINDMILL 監督/ドン・シーゲル 脚本/リー・ヴァンス 撮影/オウサマ・ラーウィ 音楽/ロイ・バッド 出演/マイケル・ケイン、ジョセフ・オコナー、ジョン・ヴァーノン、デルフィーヌ・セイリグ、ドナルド・プレザンス 1974年 106分 イギリス)


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『ガンファイターの最後』(アラン・スミシー) 

 ドン・シーゲルDVDBOXに収録されていた1本で、これは全く知らなかった。当初ロバート・トッテンが監督したが、主演のリチャード・ウイドマークとモメて降板、ドン・シーゲルが引き継いだといういわく付きの作品。クレジットではお決まりのアラン・スミシー名義となっている。時代の流れについて行けない頑固な老保安官(リチャード・ウィドマーク)が、町の実力者達にバッシングされ、やがて惨殺されるまでを描く異色作。ジョン・ウェインが老ガンマンを演じた『ラスト・シューティスト』(あ、あれもドン・シーゲルだった)みたいな路線を狙ったと思われるが、何で町の皆が保安官を怖がってるのか、その辺が説明不足なんでドラマとしては何か納得できない感じ。『真昼の決闘』みたいな町ぐるみで隠蔽したい訳ありの過去があるのか? それとも単に保安官が住民のプライベートを知りすぎてるから? ううむ、わからん。しかもウィドマークがまた頑固一辺倒というか異常に刺々しくて聞く耳持たないタイプでどうにも感情移入できず。この辺のちぐはぐな感じは監督交代劇があった為だろうか。

(『ガンファイターの最後』 DEATH OF A GUNFIGHTER 監督/アラン・スミシードン・シーゲル) 脚本/ジョセフ・カルヴェリ 撮影/アンドリュー・ジャクソン 音楽/オリヴァー・ネルソン 出演/リチャード・ウィドマーク、レナ・ホーン、ジョン・サクソン、キャロル・オコナー、ケント・スミス 1969年 100分 アメリカ)


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ドン・シーゲル コレクションDVD-BOX

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 この項続く。