moonriders LIVE at MIELPARQUE TOKYO HALL 2011.05.05“火の玉ボーイコンサート”
- アーティスト: ムーンライダーズ
- 出版社/メーカー: SPACE SHOWER MUSIC
- 発売日: 2012/01/25
- メディア: CD
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ムーンライダーズのライヴ・アルバム『moonriders LIVE at MIELPARQUE TOKYO HALL 2011.05.05“火の玉ボーイ コンサート”』。昨年(2011年)5月に行われた、『火の玉ボーイ』再演コンサートを完全収録した2枚組。デビュー35周年記念のアニヴァーサリー・ライヴであり、バンドと縁のあるたくさんのゲスト(あがた森魚、矢野顕子、矢野誠、南佳孝、駒沢裕城、徳武弘文、松田幸一、高田漣、東京中低域・・・)が参加した豪華なコンサートである。見に行けなかったので、音源化を楽しみにしていた。
収録曲は、
DISC 1
M-1.「第三の食卓 / まちがわなさ / ポアンカレ予想」
M-2.「魅惑の港」
M-3.「あの娘のラブレター」
M-4.「スカンピン」
M-5.「酔いどれダンスミュージック」
M-6.「火の玉ボーイ」
M-7.「午後の貴婦人」
M-8.「地中海地方の天気予報」
M-9.「ラム亭のママ」
M-10.「ウエディングソング」
M-11.「魅惑の港」
M-12.「髭と口紅とバルコニー」
M-13.「ラム亭のテーマ」
M-14.「蛍の光」
M-15.「浜辺の歌」
DISC 2
M-1.「マスカットココナツバナナメロン」
M-2.「頬うつ雨」
M-3.「月の酒場」
M-4.「アルファビル」
M-5.「砂丘」
M-6.「達者でナ」
M-7.「愛の列車」
M-8.「風にさらわれて」
M-9.「リラのホテル」
M-10.「東京の屋根の下」
M-11.「ピーターガン」
M-12.「ビデオボーイ」
M-13.「バックシート」
M-14.「6つの来し方行く末」
M-15.「大寒町」
コンサートは2部構成。DISC 1に収録された第1部は、ゲストとともに76年の傑作アルバム『火の玉ボーイ』を再演している。慶一氏も「ムーンライダー‘ス’です」(ズにあらず)とMCしている。オープニングはブラスバンドの東京中低域。「魅惑の港」も東京中低域によりダーティ・ダズン・ブラス・バンドみたいなファンキーなサウンドに。「スカンピン」以降はゲストが入れ替わり立ち代わり、ムーンライダーズと一緒に演奏を繰り広げる。アルバムに比べると全体的に若干テンポを落とし、原曲に無い複雑なニュアンスが感じ取れる演奏となっている。「髭と口紅とバルコニー」は何度聴いてもいい曲だなあ。ムーンライダーズ35周年を祝うあがた森魚氏のMC(活弁士調)で第一部は終了。あがた氏は「ウエディング・ソング」「リラのホテル」等でも個性的な歌声を聴かせて大活躍だ。
休憩を挟んで第2部は、ライダーズのメンバーが交代でヴォーカルを担当し、自作のナンバーを演奏。M-1「マスカットココナツバナナメロン」(岡田氏)、M-2「頬うつ雨」(武川氏)、M-3「月の酒場」(博文氏)、M-4「アルファビル」(白井氏)、M-5「砂丘」はかしぶち氏と矢野顕子のデュエットで。その後はライダーズをバックにゲストがメインで演奏。最後は、最初期からのレパートリーである「大寒町」で大団円を迎える。
同年の暮れに中野サンプラザで行なわれたコンサートには、「ラスト・コンサート」的な湿り気が皆無であった。本盤を聴くと、ザ・バンドの『ラスト・ワルツ』的アニバーサリー・ライヴは既に5月にやっちゃったんで、暮れはあそこまで振り切れた演奏に専念出来たのかなあと思う。
上手く言えないけれど、ムーンライダーズには『火の玉ボーイ』に代表されるような初期の路線を大事に大事に続けて歳を重ねてゆくというやり方もあったのだろうと思う。本盤に納められた円熟の演奏を聴いていると、それもまた悪く無かっただろうと思わないではない。でも、そうはならなかったのがまたライダーズ。本盤にしても、どう考えても違和感のある「アルファビル」や「バックシート」なんかが紛れ込んでいるあたり、そうこなくっちゃなあとも思う。
このコンサートは当初4/2に行われる予定だったが、震災の影響で5/5に延期(スケジュール変更により当初ゲストとして予定されていた細野晴臣氏は出演できなくなった)された。コンサート本編には震災直後のイベントであることを匂わせるような演出は無い。あがた氏のMCでほんの少し触れられているだけだ。だがアルバム・ジャケットのイラストには開催延期の告知が描かれていたりして、震災の傷跡はさりげなく刻印されている。
35年前(1976年5月1日)に同じ会場(郵便貯金ホール)で開催されたコンサートの模様は、アーカイヴ・シリーズVol.1『ムーンライト・リサイタル1976』としてCD化されている。聴き比べて35年間で変わったこと、変わらぬことを噛み締めてみたいと思う。