Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『ストリーマーズ/若き兵士たちの物語』(ロバート・アルトマン)

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『ストリーマーズ/若き兵士たちの物語』 STREAMERS


 監督/ロバート・アルトマン
 原作・脚本/デヴィッド・レイブ
 撮影/ピエール・ミニョー
 出演/マイケル・ライト、マシュー・モディーン、ミッチェル・リヒテンシュタイン
 (1983年・118分・アメリカ)
 

 ロバート・アルトマン監督『ストリーマーズ/若き兵士たちの物語』見る。『ポパイ』の失敗以降、低予算で舞台劇の映画化を連発していた80年代の作品。


 ベトナム戦争が泥沼化していた頃、内地の兵舎で出兵を待つ若い兵士たちの軋轢を描くシリアスなドラマ。アルトマンの戦争映画といえば名作『M★A★S★H』がある。まだやけっぱちのユーモアみたいなものが漂っていた『M★A★S★H』から十数年を経て、本作は救いようの無い暗さに覆われている。『M★A★S★H』のドナルド・サザーランドエリオット・グールドなら若い兵士をユーモアで勇気付けようとしただろうが、本作に登場するベテラン兵士2人は若い兵士のストレスを募らせるばかりだ。


 アルトマンは舞台を兵舎内に限定し(カメラは兵舎から一歩も外へ出ない)、息苦しい程の閉塞感を生み出している。兵士たちの使う二段ベッド、ベッドの間の通路、ロッカー、シャワールーム、窓越しの景色、そういった目に見える物ひとつひとつがどんどん重みを増し、登場人物ひとりひとりの内面と緊密に結びついて、じわじわと緊張感が高まってゆく。先行きの見えない極限状態に置かれた若い兵士たちのストレスが肌に感じられるようである。


 本作はベネチア映画祭で主演の6人が揃って男優賞を受賞している。大学出のインテリ兵士を演じているのはマシュー・モディーン。80年代から90年代にかけてキューブリックの『フルメタル・ジャケット』、アラン・パーカー『バーディ』、アラン・ルドルフ『堕ちた恋人たちへ』、アルトマン『ショート・カッツ』等々、問題作に次々出演していたけど、最近は全く顔を見なくなってしまった。