Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『白鯨』(ジョン・ヒューストン)

白鯨 [DVD]

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『白鯨』 MOBY DICK


 監督/ジョン・ヒューストン
 原作/ハーマン・メルヴィル
 脚本/レイ・ブラッドベリジョン・ヒューストン
 撮影/オズワルド・モリス
 音楽/フィリップ・セイントン
 出演/グレゴリー・ペック、レオ・ゲン、リチャード・ベースハート、オーソン・ウェルズ
 (1956年・116分・アメリカ)


 ハーマン・メルヴィルの同名小説を、ジョン・ヒューストンが映画化した『白鯨』。巨大な白鯨を倒すことに執念を燃やす捕鯨船の船長と船員たちの運命を描く。ヒューストンとともに脚本を担当したのは、先日亡くなったレイ・ブラッドベリだ。


 映画全体の雰囲気は、渋い色調の文芸映画風。なんだけど、そこは荒くれ男どものドラマを得意とするヒューストンの映画なので、単純に大海原を舞台とした特撮(!)冒険活劇として楽しめる。個性溢れる船員たちの顔つきがいい。巨大鯨の特撮はミニチュア・ワークだけど、なかなかの迫力だ。今やタブーと思われる鯨漁の様子が詳細に描かれているのも興味深かった。
 

 エイハブ船長を演じるのはグレゴリー・ペックグレゴリー・ペックといえば、一般的には『ローマの休日』や『アラバマ物語』等の善良なキャラクターで知られているけれど、イメージ・チェンジを意識してか本作や『ブラジルから来た少年』等、時折狂気じみた役柄を演じている。『ブラジルから来た少年』の時も思ったけど、何だか着ぐるみでも着ているかのような妙な雰囲気だ。オーソン・ウェルズがワンシーン出演で気持ち良さそうに長台詞を披露しているのも見所だ。


 ブラッドベリの自伝『緑の影、白い鯨』には、脚本家として雇われた若きブラッドベリとヒューストンの確執が描かれていると言う。これは是非とも読まねばなるまい。


緑の影、白い鯨

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