Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『ミラノ・カリブロ9』(オザンナ)

ミラノ・カリブロ9(紙ジャケット仕様)

ミラノ・カリブロ9(紙ジャケット仕様)


 イタリアン・アクションの快作『ミラノ・カリブロ9』(1972年)のサントラ・アルバム。まさか日本盤CDが出ているとは思わなかったので驚いた。音楽はイタリアのプログレッシブ・ロック・バンド「オザンナ」と、息の長い活躍を続けるイタリア映画音楽界の名匠ルイス・エンリケス・バカロフ。バカロフといえば『イル・ポスティーノ』・・・いや、マカロニウエスタンですよ『続・荒野の用心棒』ですよ「♪ジャンゴ〜」ですよ!バカロフとオザンナのコラボレーションに至る経緯は良く分からないけど、かなり強力なタッグであるのはアルバムを一聴すれば分かる。


 収録曲は「プレリュード」「テーマ」「ヴァリエーション1〜7」「カンツォーネ」の全10曲。単なる劇伴と呼ぶにはあまりに自己主張の激しい曲ばかりがずらりと並んでいる。特にM-1「プレリュード」のインパクトは凄まじい。ドラマティックなメロディを奏でるストリングスから、一転してへヴィなプログレサウンドに変貌、ディストーション・ギターが唸り、フルート(!)が嵐のごとく暴れまわる。大仰で下品と言われそうな気もするが、抜群にカッコ良いです。これくらいアクが強くないとイタリアン・アクションの濃ゆううい世界には合わないのかもしれないなあと思う。


 プログレには疎いので調べてみたら、本盤はオザンナの2ndアルバムにあたり、紙ジャケ仕様の日本盤CDは2004年にリリースされていた。映画の方は劇場未公開で、当時はまだDVDも出ていなかったので(映画DVDリリースは2006年)、音源を先に聴いたユーロ・プログレのファンの間ではどんな映画なのかと話題になっていたようだ。


 映画『ミラノ・カリブロ9』は、カルト人気を誇るイタリアB級アクションの帝王フェルナンド・ディ・レオ監督作品。レオの絶頂期と思われる70年代の作品で、完成度はさておき、荒々しく前のめりの演出が痛快な一作だ。主演は『黄金の七人』等の強面ガストーネ・モスキン。脇には『黒い警察』の特濃顔マリオ・アドルフ、『黄金の七人』の教授ことフィリップ・ルノワ、『タランチュラ』のセクシー女優バーバラ・ブーシェらイイ顔の面々が揃っている。


 映画の冒頭、何者かに組織の金が奪われ、犯人と疑われた運び人たちがリンチに遭い、仕舞いにはダイナマイトで爆殺される凄まじさ。バカロフ/オザンナによるテンションの高い音楽がバイオレントな画面を盛り上げる。その後、お話は組織の金を奪った真犯人は誰か?という謎解きも交えてサスペンスフルに展開し、濃い顔の悪党どもが騙し合いを演じる。終盤のどんでん返しはなかなかのもの。ちゃんと日本版DVDも発売されているので、音楽ともども興味のある方はぜひチェックしてみて下さい。


ミラノカリブロ9 [DVD]

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