Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『旋風の中に馬を進めろ』(モンテ・ヘルマン)

旋風の中に馬を進めろ [DVD]

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『旋風の中に馬を進めろ』 RIDE IN THE WHIRLWIND


 監督/モンテ・ヘルマン
 製作/ロジャー・コーマン
 脚本/ジャック・ニコルソン
 撮影/グレゴリー・サンダー
 音楽/ロバート・ジャクソン・ドラスニン
 出演/キャメロン・ミッチェル、ジャック・ニコルソン、ミリー・パーキンス、ジョージ・ミッチェル、ハリー・ディーン・スタントン
 (1966年・82分・アメリカ)
 

 モンテ・ヘルマンのミニ特集、『旋風の中に馬を進めろ』(1966年)について。先の『銃撃』同様に日本劇場未公開。現在は日本版DVDがキングレコードよりリリースされている。


 牧場での仕事を終え、故郷に帰る途中のカウボーイ三人組。たまたま宿泊した山小屋の先客は、駅馬車を襲撃したお尋ね者の一団であった。翌朝、一団を追っていた自警団が現れて一斉射撃が始まった。カウボーイたちもお尋ね者の仲間と誤解され、追跡される羽目に陥った・・・。


 『銃撃』が不条理テイストならば、こちらは正に「リアル西部劇」。過激な自警団に捕まったお尋ね者は、裁判もなしに即吊るし首。お尋ね者と間違われたカウボーイたちも延々追跡された挙句に、意に反して殺人、馬泥棒と犯罪者に落ちぶれていく。往年のハリウッド西部劇ならばやがて主人公たちの嫌疑は晴れ、ハッピーエンドを迎えるのだろうが、本作は追われるばかりの身も蓋も無い展開でラストには何の救いも無い。颯爽としたタイトルとは裏腹に、やるせない気分に陥る事必至である。


 主人公は若きジャック・ニコルソン。ニコルソンは本作の脚本も担当している。相棒役はキャメロン・ミッチェル。キャメロン・ミッチェルはセルジオ・コルブッチマカロニウエスタンミネソタ無頼』で盲目ガンマン、ミネソタ・クレイを演じてた彼である。日焼けした顔に年輪が刻まれ、多くは語らないが何か訳ありな中年カウボーイを好演。お尋ね者の隻眼リーダー役はハリー・ディーン・スタントン(クレジットはディーン・スタントン名義)。ヒロインは『銃撃』にも出演のミリー・パーキンス。


 『悪魔を憐れむ詩』のインタビューでは、ヘルマンは必ずしも「反=西部劇」を意図していた訳では無いと語っていた。試みたのは「予測可能な物事を避けることだった」と。こうして見ると『銃撃』も『旋風の中に馬を進めろ』も、確かに(ヘルマンなりの)ちゃんとした西部劇である。ハリウッド製の明朗快活な西部劇ではないというだけで、決して「反=西部劇」というようなものではないと思う。とは言え、いつも見慣れた西部劇とは明らかに異質な肌触りがとても面白い。