Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

「○社会」と言えば・・・とか、その他

笛社会

笛社会


 ここしばらく我が家は日常全てが赤子のペースに支配されていて、映画鑑賞は勿論、音楽鑑賞もままならない。ムーンライダーズ中野サンプラザ公演のDVD、岡田さんとくじらさんのソロアルバムも買ったはいいがまだ聴けていない。唯一、高橋幸宏トリビュートアルバム『RED DIAMOND -Tribute to Yukihiro Takahashi-』だけは聴く事が出来た。錚々たる参加アーティストの中で特に印象に残ったのは、やはり鈴木慶一による「X’mas Day In The Next Life」のカヴァーであった。もの凄くいい曲なんで改めて感動した。泣いたよ。残暑厳しいこの季節に。クリスマス・ソングで。他には、トッド・ラングレンによる「Forever Bursting Into Flame」が素晴らしいと思ったなあ。


 最近我が家でへヴィーローテーションとなっているのは、栗コーダーカルテット。妻と「赤子に聴かせる良い音楽はないか」と検討した結果、ほのぼの具合では他の追随を許さない栗コーダーに落ち着いた。試したところ、一緒に遊ぶ時のBGMになるし、かなりの確率でおとなしく眠ってくれる。特にアルバム『笛社会』は効果絶大だ。それにしても。「○社会」と言えば、香港映画ファンなら「黒」と答えるところだが、「笛」って・・・。


 先の週末は三連休だったので、赤子を連れて実家に帰ろうかと計画していた。ところが野暮用で土曜出勤になってしまったので、止むを得ず仙台で過ごすことになった。家事・育児の隙を見つけてひたすら本を読んでいた。津原泰水『11』、伊藤計劃虐殺器官』『The Indifference Engine』、そして伊藤計劃円城塔屍者の帝国』に取り掛かったところで時間切れ。赤子をあやす合間に血みどろの虐殺器官もあったもんじゃないなあと思いつつ、ひたすら読書と育児の休日であった。今の自分にとってリアルなのは腕に抱く赤子の重みであって、絵空事の小説に心動かされることはない。幸い『11』も『虐殺器官』も『The Indifference Engine』も、エンターテイメント性と、世界への真摯な考察を併せ持つ優れた小説であった。ゼロ年代を代表するSF作家と名高い伊藤計劃は噂に違わぬハイ・クオリティ。もっと早く読むんだった。しかし伊藤氏は余程スパイとモンティパイソンがお好きなようで、007にジョン・クリーズが出演した時にはきっと狂喜したことだろうね。各小説の詳しい感想は後日改めて書くつもり。