Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

ホラー映画ベスト10

ワッシュさん「男の魂に火をつけろ!」の「ホラー映画ベスト10」に投票します。
http://d.hatena.ne.jp/washburn1975/20121031


『血を吸うカメラ』(1960年・イギリス 監督/マイケル・パウエル 出演/カール・ベーム
砂の女』(1964年・日本 監督/勅使河原宏 出演/岡田英次
『赤い影』(1973年・イギリス/イタリア 監督/ニコラス・ローグ 出演/ドナルド・サザーランド
悪魔のいけにえ』(1974年・アメリカ 監督/トビー・フーパー 出演/マリリン・バーンズ)
『テナント/恐怖を借りた男』(1976年・フランス/アメリカ 監督・出演/ロマン・ポランスキー
『ゾンビ』(1978年・アメリカ/イタリア 監督/ジョージ・A・ロメロ 出演/ケン・フォリー
戦慄の絆』(1988年・カナダ 監督/デヴィッド・クローネンバーグ 出演/ジェレミー・アイアンズ
ミミック』(1997年・アメリカ 監督/ギレルモ・デル・トロ 出演/ミラ・ソルヴィーノ
『降霊』(1999年・日本 監督/黒沢清 出演/役所広司
『フレイルティー/妄執』(2001年・アメリカ 監督・出演/ビル・パクストン


 ハラハラドキドキという明瞭な怖さではなくて、見ている間(そして鑑賞後思い出してみても)じっとりと嫌な汗が出るような、不穏な感覚を覚えた10本です。順不同です。簡単に解説を。


『血を吸うカメラ』(マイケル・パウエル 
 恐怖に慄く女性の表情を撮影することに執着するカメラマンを描く。映画における「見る/見られる」(撮る/撮られる)という関係性についての深い考察と、ある種のフィルターを通さなくては他者と交流を持てない男の哀しみをきちんと描き、数多あるホラー映画とは一線を画している。邦題のセンスも素晴らしい。「怖いってなんだろう」とひたすら追求して破滅してゆく主人公は、ホラー映画マニアの姿そのものではないか。近作では『稀人』(清水 崇)、『恐怖』(高橋洋)、『世界の終り』(ジョン・カーペンター)等の主人公達もまた。

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砂の女』(勅使河原宏
 昆虫採集に砂丘の村を訪れた教師(岡田英次)が陥る恐ろしい罠。これは純粋なホラー映画ではないけれど、敢えてジャンル分けするならば、「スモールタウン・ホラー」「邪教もの」に括ることも出来るであろう。冒頭の「いったいいくつの証明書を発行すればよいのだろうか」とかいう安部公房節にはシビれた。

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『赤い影』(ニコラス・ローグ
 考古学者(ドナルド・サザーランド)が、水死した娘の幻影を追ってヴェニスの街を彷徨う。最初に見た時にはラストのびっくり映像ばかり記憶に残っていたが、年を重ね見直す度に、良い映画だなという思いが深まっていく。こんなホラー映画は他に無い。愛する娘を失って、お互いに情緒不安定を庇い合うサザーランド&クリスティ夫妻の紆余曲折が丹念に描かれている。自分が結婚して(しかも娘が生まれて)からは、最早涙なくしては見れない作品だ。

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悪魔のいけにえ』(トビー・フーパー
 これは解説不要ですね。「田舎は怖い」というジャンルの代表作。

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『テナント/恐怖を借りた男』(ロマン・ポランスキー
 都会で一人暮らしを始めた頃の不安な感覚が呼び覚まされる。いじけた鼠みたいなポランスキーの顔つき、アジャーニのフレームの大きな眼鏡、平手打ち、飛び降り×2。『ローズマリーの赤ちゃん』『反撥』等、ポランスキーのひりひりした異常神経ぶりは他の追随を許さない。

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『ゾンビ』(ジョージ・A・ロメロ) 
 これも解説不要ですね。現在も映画にTVにコミックに増殖を続けるモダン・ゾンビ映画の偉大なる父。


戦慄の絆』(デヴィッド・クローネンバーグ
 『スキャナーズ』『ヴィデオドローム』『ラビッド』等名作数多いクローネンバーグの中で、一番怖かったのがこれ。双子の婦人科医(ジェレミー・アイアンズ)と女優(ジュヌヴィエーヴ・ビジョルド)の三角関係を描く。妙なデザインの手術器具とかチビりそうなくらい怖かった。

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ミミック』(ギレルモ・デル・トロ
 遺伝子操作で作られた新生物が、ニューヨークの地下鉄で人間を襲う。虫(特にゴ●●リ)が大の苦手なので、これは映画館に来たのを後悔するほど怖かった。ロメロの『クリープショー』と本作は虫嫌いトラウマ映画の双璧。

ミミック [DVD]

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『降霊』(黒沢清 
 黒沢清は『キュア CURE』も『回路』も『叫』も良いけれど、一番怖かったのはこれ。『回路』同様に幽霊が触れることのできるものとして描かれ、少女の幽霊が主人公夫婦を脅かす。主人公がドッペルゲンガーを燃やして立ち上った黒煙が、遠くに見えているショットは忘れられない。

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『フレイルティー/妄執』(ビル・パクストン
 「神の啓示」を受けた父親が、強大な父権を振りかざして我が子を殺人行脚に誘う。ジェームズ・キャメロン作品で知られる地味顔俳優ビル・パクストンが何を考えてこれを監督したのか興味深い。




 こうしてみると、「虫」「田舎」「失踪者」「情緒不安定な女」「狭い場所」といった自分が現実に怖いと思っているものが、映画的に表現されているものばかりだと気が付きます。幽霊屋敷もの(『たたり』『回転』『ヘルハウス』『シャイニング』等)も大好きなのですが、個人的には全然怖くないので、10本からは外れてしまいました。