Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『キャット・ピープルの呪い』(ロバート・ワイズ、G・V・フリッチ)

黒沢 清監督 推薦 キャット・ピープルの呪い [DVD]

黒沢 清監督 推薦 キャット・ピープルの呪い [DVD]


 昨日『キャット・ピープル』について書いたので、その続篇である『キャット・ピープルの呪い』(1944年)について。RKOのヴァル・リュートン製作による低予算ホラーの1本で、巨匠ロバート・ワイズ監督の最初期の作品だ。


 前作で猫族の末裔イレーヌ(シモーヌ・シモン)が非業の死を遂げてから数年後。元夫(ケント・スミス)は再婚して、一人娘のエミリー(アン・カーター)が生まれた。小学生となったエミリーは空想好きで、クラスでは浮いた存在となっていた。エミリーが会話を交わす空想上のお友達は、何と元妻のイレーヌだった・・・と、物語の上でもちゃんとつながりがある。とはいえ映画の雰囲気は大分異なっていて、空想好きの少女とイマジナリー・フレンドの交流を描くお話は、ホラーというよりはファンタジーの趣き。「呪い」と題されているもののそんなにおどろおどろしい映画ではなかった。個人的には、シリアスな演出ゆえにいささか間抜けにも見えた前作に比べて、こちらの軽味はかえって好印象であった。


 監督は後に『サウンド・オブ・ミュージック』や『ウエストサイド物語』といったミュージカル大作から『アンドロメダ・・・』や『スタートレック』といったSF映画、『拳銃の報酬』や『罠』といったタイトな犯罪映画まで幅広く手がける巨匠ロバート・ワイズ。ホラー映画も『キャット・ピープルの呪い』から始まって、『たたり』『オードリー・ローズ』等々、後年まで作り続けている。


(『キャット・ピープルの呪い』THE CURSE OF THE CAT PEOPLE 監督/ロバート・ワイズ、G・V・フリッチ 脚本/ドゥウィット・ボディーン 撮影/ニコラス・ムスラカ 音楽/ロイ・ウェッブ 出演/シモーヌ・シモン、トム・コンウェイ、ケント・スミス、ジェーン・ランドルフ、アン・カーター、イヴ・マーチ、ジュリア・ディーン 1944年 77分 アメリカ)