Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『転々』(三木聡)

転々 プレミアム・エディション [DVD]

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『転々』


 監督・脚本/三木聡
 原作/藤田宜永
 撮影/谷川創平
 音楽/坂口修
 出演/オダギリジョー三浦友和小泉今日子吉高由里子岸部一徳
 (2007年・101分・日本)


 三木聡監督『転々』(2007年)見る。予告編に鈴木慶一の曲が流れたのを見てずっと気になっていた一作。借金を抱えた青年(オダギリジョー)が、100万円の謝礼と引き換えに借金取り(三浦友和)の東京散歩に付き合わされる、というお話。


 ずっと気にしていながら長らく見ていなかったのは、三木監督の作風に不安を思えていたからであった。予想通り、全編居心地が悪くて仕方なかった。映像のリズム、台詞、衣装、俳優の演技(振り付け)、本筋から外れたサブストーリーへのこだわりや、「ちょっといい話」のように展開してゆくところも。一言で言えば「わざとらしくてヤだなあ」という事なんだが。“脱力系”とはよく言ったもので、こういう作風が好きな人もいるのだろうが、個人的にはちょっと苦手なのだ。生理的に合わない感じで如何ともし難いものがあったなあ。


 フォローしておくと、東京の風景(主に下町の商店街など)を捉えた撮影は飾り気が無くて良いと思った。なので登場人物たちが(妙な小芝居をせずに)単に町をぶらぶら歩いているショットが一番好きだった。ってフォローになってないか。基本キャラクター重視の物語、なんだけど人工的な演出が施されているところ、東京散歩のシチュエーションなど、共通点が多い森田芳光の『の・ようなもの』(1981年)と二本立てで見ると面白いかもしれない。


 件の鈴木慶一の曲は、『髭とルージュとバルコニー』(『火の玉ボーイ』収録の名曲)。慶一を知らない人でも、きっと「これ誰の曲?」と思わず聞きたくなるようなハマリっぷり。曲のおかげで映画の好感度はかなりアップしていたと思う。この映画で慶一の知名度が上がったのなら喜ばしいことだ。その点だけは大いに感謝したい。