Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『泰平ヨンの未来学会議』(スタニスワフ・レム)

 ポーランドのSF作家、スタニスワフ・レムの『泰平ヨンの未来学会議』KongresFuturologiczny(1971年)読了。映画化作品『コングレス未来学会議』公開に合わせて文庫化された「改訳版」にて。


 泰平ヨンの冒険を描くシリーズものの1本とのことですが、これまでレムといえば『惑星ソラリス』の原作くらいしか読んだことがなかったので、こんなのも書いているのかと驚きました。『ソラリス』の静謐な雰囲気に比べ、こちらは思いっ切りスラップスティックかつブラック。


 コスタリカで開催される「世界未来学会議」を訪れた主人公ヨン氏が遭遇する大騒動。ホテルで暴動に巻き込まれ、政府と反乱軍の使用する大量の薬物を浴びせられ、150年後の世界で目覚めるとそこはすべてがかなうユートピア、と思ったらそれは幻覚かもしれず・・・と粗筋を書き出してもあんまり意味はないようです。未来社会では誰もが薬物(幻覚剤)を服用していて、何が現実で何が幻覚かわからなくなっているという設定で、何不自由ない豊かな世界に見えたものが、ヨン氏が薬物の幻覚を抑える薬物を飲むと、荒廃した世界が垣間見えます。本人は車に乗っていると思っているけど実は自分で走ってるだけだったり。この辺の展開には、ふと藤子不二雄の『モジャ公』(シャングリラ篇)を思い出しました。


 本作はアリ・フォルマン監督(『戦場でワルツを』)によって映画化されています。この無茶苦茶なお話をどうやって映像化しているのか気になるところ。解説によると主人公は泰平ヨン氏ではなくて、女優のロビン・ライト(本人役)なんだという。是非ともチェックしたい。



藤子・F・不二雄大全集 モジャ公

藤子・F・不二雄大全集 モジャ公