Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

007、マカロニ、クローネンバーグ

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 昨日の続きです。007シリーズを見直してみて、全く覚えていなかったのでショックを受けたことを書きました。自分が007シリーズに思い入れが無いから覚えていないのかもしれず、だとすれば、自分が好きなジャンルならばどうでしょうか。同じく「娯楽映画」のジャンルであるマカロニウエスタンならば。


 007(スパイ映画)がそうであるように、マカロニウエスタンもまたマンネリズムの世界であります。同じような物語、同じような衣装、同じような(じゃなくて同じ)ロケ地、似たような音楽、出てくる俳優も同じ(フェルナンド・サンチョの顔を何度見たことか!)・・・。マカロニの邦題は「真昼の」「裏切りの」「夕陽の」「荒野の」「用心棒」「ガンマン」「リンゴ」「ジャンゴ」「一匹狼」「皆殺し」「決闘」「無頼」、これらの単語の安直な組み合わせで出来上がっており、さらに「続」とか「新」とか付いたりして、似たような題名だらけ。マカロニのタイトルを10本並べて粗筋を詳しく語れと言われるとさすがに困ってしまいますが、物語はともかく見せ場や印象的なショットならいくつも思い出せます。音楽や映像のムードにこだわるイタリア人の映画の作り方がそうさせるのでしょうか。


 唐突ですが、ここで思い出したのはデヴィッド・クローネンバーグの『ヴィデオドローム』のことです。最初はレンタルビデオ黎明期の80年代前半に見たのですが、当時はあまり好きではありませんでした。それから10年以上経って、劇場でリバイバル公開されたので見に行きました。1997年に『クラッシュ』公開に合わせて劇場にかかったのです。この時見直して驚いたのは、隅から隅まで覚えていたことでした。初見当時は別に好きな作品でもなかったのに。まるで繰り返し見た愛着ある作品のように隅から隅まで覚えていて、しかも初見の時よりもしっくりと馴染むのを感じました。これは不思議な感覚でした。


 007は覚えていない。マカロニは覚えている。クローネンバーグは覚えているどころか記憶に根を張っているようだった。これはあくまで個人的な例です。マカロニもクローネンバーグも印象に無いけど、007なら隅から隅まで語れるよ、という映画ファンも多いでしょう。それはさておいて、イメージが鮮明に根付く映画とそうでない映画の差は、何なのでしょうか。主人公の心情に共感して印象に残るという場合もあるでしょうが、これらはそういった映画ではありません。イメージが鮮明に根付くというのは、映画そのものが放つ何かなのか、それとも受け手のコンディションの問題なのか、たまたまそれがシンクロする時があるのか・・・。



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