狼たちは天使の匂い 我が偏愛のアクション映画1964?1980? (我が偏愛のアクション映画1964~1980 1)
- 作者: 町山智浩
- 出版社/メーカー: 洋泉社
- 発売日: 2015/06/13
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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町山智浩『狼たちは天使の匂い』読了。「映画秘宝」誌連載の単行本化で、表紙イラストはチャールズ・ブロンソンやリー・マーヴィンという2015年の近刊とは思えぬ顔ぶれ。内容は表紙&タイトル通り、町山さんが偏愛する1960〜1970年代のアクション映画について熱く語った一冊です。個人的にも好きな映画、馴染み深い映画(ばかり)が次々登場するので、あっという間に読み終えてしまいました。
本書で紹介されている作品は、イーストウッド主演作以外のドン・シーゲル監督作品『殺人者たち』『刑事マティガン』『突破口!』、中年スナイパーの生き様を描く渋いイタリアン・アクション『殺しのテクニック』、俳優ロバート・カルプ唯一の監督作(脚本ウォルター・ヒル)『殺人者にラブ・ソングを』、マイケル・ウィナー監督+ブロンソン主演コンビの陰鬱なアクション『狼よさらば』『メカニック』、セバスチャン・ジャプリゾ脚本による男のロマン香る『狼は天使の匂い』『さらば友よ』、リチャード・スターク原作の悪党パーカー・シリーズを映画化した『殺しの分け前/ポイント・ブランク』『組織』、リチャード・フライシャー監督の匠の技が光る『マジェスティック』『センチュリアン』、シドニー・ルメット監督の汚職警官もの『セルピコ』『プリンス・オブ・シティ』、エンニオ・モリコーネの音楽も印象深いセルジオ・ソリーマ監督のイタリアン・アクション『狼の挽歌』、白バイ警官が主人公の何ともやるせない裏『イージー・ライダー』こと『グライド・イン・ブルー』、コーマン印の痛快なヒロイン・アクション『ビッグ・バッド・ママ』、アラン・コルノー監督+イヴ・モンタン主演コンビの珍品(だよね?)『真夜中の刑事/PYTHON357』、ひねくれ者アルトマンがハードボイルド神話を脱構築した『ロング・グッドバイ』、アクション派ジョン・フランケンハイマー監督によるコメディ・タッチの異色作『殺し屋ハリー/華麗なる挑戦』、対照的なバディ・コップもの『破壊!』『フリービーとビーン/大乱戦』、最近TSUTAYAの発掘良品でめでたくDVD化された『狼のシンジケート ダーティ・エディ』(『エディ・コイルの友人たち』)、列車のタダ乗りのプロ・マーヴィンVS鬼車掌・ボーグナインの死闘を描く豪腕アルドリッチの『北国の帝王』、『フレンチ・コネクション』製作スタッフ・キャストによる殺伐としたカーチェイス映画『重犯罪特捜班/ザ・セブン・アップス』、イギリスの中尾彬こと野獣オリバー・リード主演の『電撃脱走・地獄のターゲット』『非情の標的』、激烈なアクションと叙情が同居するジョン・ミリアス監督のデビュー作『デリンジャー』・・・。紹介された作品の内、未見なのは『フリービーとビーン/大乱戦』、『電撃脱走・地獄のターゲット』、『プリンス・オブ・シティ』の3本。中でもルメットの『プリンス・オブ・シティ』は是非とも機会を見つけて鑑賞したいと思いました。本書に描かれている、複数の企画を巡ってのルメットとデ・パルマの因縁話も興味深いものがありましたね。
60年代終わりから70年代初めにかけてのアメリカン・ニューシネマの時代には、若者の体制への反抗と挫折を好んで描く一方で、新しい時代に取り残されていく旧世代の足掻きを描く映画群がありました。アクション映画の世界にもその影響は色濃く反映しています。本書で採り上げられているのは正にそんな作品たちです。主人公は刑事や殺し屋やギャングなど様々ですが、オッサンが暴走するような映画ばかり。
本書に登場する俳優たちを見ていくと、何と言ってもリー・マーヴィンとチャールズ・ブロンソンです。笑っちゃうくらい何回も登場します。町山さんの好みもあるのでしょうが、この2人はやはりこの時代にジャンルを代表する「顔」だったんだろうなあと思います。オリバー・リード、ジョー・ドン・ベイカー、ジョン・ヴァーノン、エリオット・グールド、ロバート・ブレイクらが複数登場。他にもジョージ・C・スコット、ロバート・ミッチャム、ウォーレン・オーツ、ロバート・デュバル、ロイ・シャイダー、リチャード・ハリス、イヴ・モンタンら、見事にオッサンばっかり。唯一主役を張る女性は熟女アンジー・ディキンソン。あ、彼女も『殺人者たち』『殺しの分け前/ポイント・ブランク』と複数回登場してるのか。
町山さんの他の著作と同様に、本書も映画の解説の合間に氏の個人史が盛り込まれています。映画は確かに娯楽のひとつではあるけれど、単なる暇つぶしを超えた衝撃や影響を人生に与える(こともある)ということが、きちんと伝わってきます。「なんでオヤジは12〜13歳くらいの子供にこんな映画ばかり見せたんだろう?」という氏の疑問は笑えますが、そんな風にしか息子とコミュニケーションが取れなかったのであろう親父さんの不器用さが伝わってくる話です。うちの場合父親に映画に連れて行ってもらった記憶なんて皆無なので、ちょっと羨ましくもあり。さておき、本書のラインナップからはイーストウッドやペキンパー作品は敢えて外していると思われ、続刊に期待したいところ。
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