Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『ロスト・ワールド』(ハリー・O・ホイト)

ロスト・ワールド [DVD]

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 昨年(2017年)はとにかく忙しくて、上半期は何と1本も映画を見なかった。劇場に限らず、レンタルでも手持ちのソフトでも、TV放映でも。6ヶ月間1本も映画を見ないなんて、意識して映画を見るようになった中学時代からこれまで無かったことだった。さすがにこれははまずいぞ、と下半期は可能な限り頑張った。頑張った、ってのも変だが。それでもトータルでたったの39本にしかならず、やはり鑑賞本数ワーストを更新してしまった・・・。


 今年(こそ)はたくさんの映画を見たいなあ・・・。と言いながら、すでに1月も最終日。映画館へはまだ行けてない。今年に入って見たのは、スピルバーグの『戦火の馬』とブレッソンの『バルタザールどこへ行く』の2本のみ。(別に動物シリーズという訳ではないです)


 めったに見れないのなら「作品を厳選してハズれのないように」と思うが、なかなかそうはいかなかった。(とにかく時間が出来たらその時タイミングが合うものを見る、という感じだったので)必然的にハズれもあったわけだが、不思議と腹が立つようなことは無かった。1本の映画を見ると、その背後にある無数の映画たちの存在を感じる。上手く言えないのだけれど、過去の鑑賞体験や自分なりの映画史的知識が呼び覚まされて、映画脳がざわめくような感覚がする。これはただひたすらに本数をこなしていた若い頃には感じたことがなかったなあと思う。だから、今は駄作を見てもあんまり腹が立たなくなったような気がする。


 さておき、昨年見て印象に残った作品について、感想を書き記しておきたいと思う。


 まずは『ロスト・ワールド』(1925年、監督ハリー・O・ホイト)から。これは何でも良いからとにかく映画を見たくて、上映時間が短い+怪獣映画の古典、ということでレンタルした。アーサー・コナン・ドイルの『失われた世界』を元にした、サイレント時代の特撮映画の古典だ。ハリーハウゼンの師匠ウィリス・オブライエンによるストップモーション・アニメがたっぷり堪能できる。ジャングルでは特殊メイクの猿人が跳梁する見せ場もあり。ブロントサウルスがロンドンの街で暴れるクライマックスは最高だった。サイレントかつストップモーション・アニメなんで、リアルとはほど遠い映像なのに、何でこんなに楽しいのだろうか。見るからに作り物であるが故に、想像が入り込む余地があるからなのか。それとも単に「コマ撮り」が好きなのか・・・。


 ちなみに映画データベースによるとオリジナルは100分、短縮版55分となっていて、レンタルしたDVDだと64分(1991年度版とのこと)の表記になっている。レンタルしたDVDは妙な伴奏入りだったので、音を消して完全なサイレントで楽しんだ。

(『ロスト・ワールド』THE LOST WORLD 監督/ハリー・O・ホイト 原作/コナン・ドイル 脚本/マリオン・フェファックス 撮影/アーサー・エディソン、ホーマー・スコット、デイヴ・ジェニングス 特撮/ウィリス・H・オブライエン 出演/ウォーレス・ビアリー、ベッシー・ラヴ、ルイス・ストーン、アーサー・ホイト 1925年 55分 アメリカ)


失われた世界―チャレンジャー教授シリーズ (創元SF文庫)

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