Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『キング・コング』(メリアン・C・クーパー、アーネスト・B・シュードサック)

 

 世間では『ゴジラ-1.0』が賛否両論盛り上がってますが、個人的にはいまひとつ食指が動かず。でも何かそのジャンルの作品を見たいと思い、『キング・コング』オリジナル1933年版を鑑賞。絶海の孤島で神と崇められる怪獣キング・コングを描く特撮映画の古典的名作であり、様々な怪獣映画のオリジンだ。これまた大昔に見て以来の再見。

 

 本作は『ロスト・ワールド』(1925年)に続いて、特技監督ウィリス・オブライエンハリーハウゼンのお師匠さん)のストップモーションアニメが大きな見せ場。コングと恐竜の格闘場面は今見ても迫力がある。コングがとても表情豊かで、初めてフェイ・レイを見た時の「わー!可愛い!」と言いたげな顔や仕草など実に味わい深い。

 

 改めて見ると結構描写は残酷で、死人続出。人間が死ぬ様子をちゃんとそれと分かるように撮っているのがとても印象的だった。髑髏島に渡ってからの恐怖演出については、ピーター・ジャクソンのリメイク版がキツかった訳ではなく、原典に忠実なだけだった。特にギラーミン版、ピー・ジャク版でも印象的だった丸太の橋を渡る場面。クルーが振り落とされて落下死する様がしつこく描写されるのはオリジナル通り。

 

 そもそもの元凶は映画監督デナム。オリジナル版でもデナムのはた迷惑な活動屋魂はきちんと描かれていた。カメラマンに逃げられたので監督自らカメラを廻す様子は今も昔も変わらぬインディペンデント映画の製作現場か。デナムのキャラクターを強調したのがピーター・ジャクソン版で、ジャック・ブラックが演じていた。ブラックはオーソン・ウェルズのつもりで演じていたとインタビューで語っていた。

 

 クライマックスはリメイク版でも再現された高所アクション。自分は極度の高所恐怖症なので、こんなモノクロのボヤけた画質の合成丸分かりの映像でも緊張で身を固くしてしまうのだった。ラストなんてフェイ・レイそんな端にいたら危ないよーと(落ちる訳はないと分かってるのに)ヒヤヒヤしてしまった。

 

 ちなみにギラーミン版(1976年)は子供の頃映画館で見た。同時上映は鈴木則文の実写『ドカベン』。もしかすると映画館で初めて見た洋画がギラーミン版『キング・コング』だったかもしれない。多分そんな気がする。