Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

ドキュメント72時間

川べりの家

川べりの家


 NHKで放送されている「ドキュメント72時間」について。ある1つの場所(または対象)を72時間に渡って撮影するというドキュメンタリー番組で、そこに出入りする様々な人間模様が興味深く、大事件が起きるようなセンセーショナルな内容ではないけれど、いつも吸い寄せられるように最後まで見てしまう。好きな番組です。


 先日放映されたのは「大都会ねずみパトロール」というエピソード。足立区にある害獣害虫駆除業者の仕事に72時間の密着取材したもの。暖かくなりねずみの活動が活発化する春先には月に1000件もの依頼が舞い込むというこの業者は、24時間体制で駆除に走り回っている。ねずみを退治する決定的な瞬間とかそういうのは無くて、精力的に依頼先を回る職員の地道な仕事ぶりを丹念に追ってゆくのがメイン。空き家問題でねずみが増えているとか、オリンピック関連の大規模な工事でねずみたちが移動しているとか、普段は表に出ることのない現在の東京のある側面が語られるという興味もあるけれど、それよりもねずみの被害に悩む人々(飲食店の人たちやアパートの住民、古い一軒家に一人暮らしする老女ら)、地味であまり楽しいとも思えない作業を淡々とこなしてゆく職員たちの表情や言葉に何ともいえない味わいがあって面白かった。自動販売機の下からひょっこり顔を出すねずみもまた。


 これまで自分が見た中では、秋田を舞台にしたエピソードが2回あった(全部見ている訳ではないので、もしかすると他にもあるのかもしれない)。秋田港近くのうどん・そば自動販売機にやってくる人々を取材した回と、秋田の風物詩「ババヘラ」を取材した回。秋田出身者としては、見ていて胸が締め付けられるような、センチメンタルな気持ちになった。先に放映された「東北春を探して国道45号線を行く」というエピソードもそうだった。東日本大震災から7年目の3月11日、東北の太平洋沿岸を走る国道45号線を仙台から久慈まで北上する中で出会う人々。秋田県は出ないけれど、うら寂しい感覚は東北出身者のメンタリティに強く訴えかけるものがあった。