Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『デ・パルマ』(ノア・バームバック、ジェイク・パルトロー)

デ・パルマ [Blu-ray]

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 BSで『フューリー』を放映すると言うので、ジョン・カサヴェテスが超能力ではじけ飛ぶアレか!と喜んで録画したら、ブラピ主演の戦争映画の方だった・・・。がっかり。


 それはさておき、ブライアン・デ・パルマ監督のドキュメンタリー『デ・パルマ』(2015年)鑑賞。こういった映画監督についてのドキュメンタリーというのは、家族や常連のスタッフやキャスト、または映画評論家などが画面に登場してコメントを述べたりするものだと思うけど、本作の出演はデ・パルマ本人のみ。約110分の上映時間たっぷりと、監督自らが生い立ちや自作について語り尽くすのだ。しゃべり倒す、という表現がぴったりの勢いで、まさにデ・パルマ・オン・ステージ状態。


 自作の解説は学生時代の自主製作映画から最新作『パッション』(2012年)まで、全作品について製作順に語られてゆくので、ファンにとっては至福の喜びである。初期作品や日本未公開作品の映像を見ることが出来るのも嬉しい。デ・パルマといえば熊みたいな風貌を思い浮かべるが、若い頃はひょろりと痩せていたこと。フランス・ヌーヴェルバーグ(特にゴダール)から影響を受けたこと。若きスコセッシ、ルーカス、スピルバーグらとの交流。ヒッチコックへの率直なリスペクトぶり。作曲家との交流(バーナード・ハーマンピノ・ドナジオ、エンニオ・モリコーネ)。MTV仕事(ブルース・スプリングスティーン!)。などなど、ファンならば必見のエピソードや映像が次々出てくるのだ。


 以前も書いたことがあるけれど、学生時代はデ・パルマ(と大林宣彦)が苦手であった。凝った(凝り過ぎた)映像がわざとらしくてどうにも好きになれなかったのだ。しかし歳を取るにつれて、次第に好きになってきた。映画好きならではの丁寧さというか、彼の映画の持つ「手作り感」みたいなものが好ましく思えるようになってきたのだ。気に入ったからと言って同じ映画を繰り返し見ることはあまりしない方だが、デ・パルマ作品は繰り返し見ていることが多い。『ミッドナイトクロス』『悪魔のシスター』『ファントム・オブ・パラダイス』なんかもう何度も何度も見返している。近作『リダクテッド 真実の価値』と『パッション』は未見なので、近いうちにチェックせねば。


(『デ・パルマ』 DE PALMA 監督/ノア・バームバック、ジェイク・パルトロー 出演/ブライアン・デ・パルマ 2015年 110分 アメリカ)