Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『メランコリア』(道満晴明)

 

 友人のくにとも師からいただいたコミック、道満晴明メランコリア』(上下巻)読了。最近のコミックには全く疎いので、著者の作品を読むのは初めて。くにとも師の「SFですよ」というお薦め文以外にはなんの予備知識もなく読みました。表題のメランコリアって、あのメランコリアだったか・・・。

(当時の記事です。 https://kinski2011.hatenadiary.org/entry/20120221/p1

 

 彗星「メランコリア」が地球に接近し、人類滅亡の時が刻一刻と近づいている。そんな世界で日常を送る様々な人たちの姿を描く連作短編集。エピソードが進むにつれて個々の出来事や登場人物が重なり合い、やがて彗星衝突のクライマックスを迎えるという非常に凝った構成になっていました。過去の映画やコミックの小ネタ(『殺しの烙印』よろしく殺し屋ランキングの話も)を散りばめつつ、各話はバラエティーに富んでいて切れ味は鋭く、こんなコミック描く人がいるんだなと感心しきり。確かにSFでしたよ、くにとも師。

 

 ラース=フォン・トリアーの『メランコリア』については、当時の記事を読んでいただいての通り。監督(トリアー)=主人公(キルスティン・ダンスト)=地球に接近する小惑星メランコリア)が一体となって迫る息苦しい世界で、トリアーが何度も何度も頭の中で繰り返し想像してきたであろう終末のヴィジョンを映像化したのだろうなと思いました。道満晴明版『メランコリア』は、作者=登場人物=彗星と言う息苦しい一体感は無くて、設定の割に非常にヌケが良い。各エピソードの登場人物たちは結構悲惨な背景を背負っていたりするが、意外にマイペースな日常を送っていてあんまり悲壮感が無い。作者の立ち位置は、どうだろう、事態を見守る宇宙人フレーメン部隊あたりだろうか。いや、誘拐事件の捜査でしくじって無職になった元警官中野かもしれない。彼のエピソードには、メインタイトルと同じMelancholiaの表題が割り当てられているのだった。