Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『銀の糸あみもの店』(瀬尾七重)

 

 瀬尾七重『銀の糸あみもの店』(1983年)読了。友人のくにとも師が、ウチの娘にと送ってくれた児童文学。11編のファンタジックな短編が収録されています。繊細な表紙のイラストと「あみもの店」などという題名から可愛げなお話を予想してたら、表題作なんて思いっきりホラーじゃないですか。しかもかなり怖い。(考えてみると、くにとも師がそんな単純な本を薦めてくるはずがないのだった)

 

 もちろん、『西明かりのときに』『電話』『うす黄色のかさ』『手紙をくれたのは?』といった心温まる可愛らしいお話も入っていますが、『かしわ森山の少女たち』『銀の糸あみもの店』『となりの家』『朱色の茶碗』といった怖いお話が印象に残ります。鍵っ子の孤独を描く『となりの家』や、祭りの夜に夢破れた男が故郷の海を幻視する『透見めがね』などかなりシビアなお話で大人の視点で読んでも響くものがありました。

 

 娘(小4)はとても楽しんだようで、読み終えて早速「面白かったよ!」と報告してきました。どこが好きだった?と聞くと、「文章がお洒落だった」と。そう、自分も読んでみて、過度な装飾を排した語り口がとても上品で良いと思いました。で、きっちり怖い。日常生活に隣り合わせたファンタジー空間の現出がとても巧みだと思います。くにとも師、素晴らしい本をどうもありがとうございました!