Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『殺人捜査線』(ドン・シーゲル) 

 

 菊川Strangerにて開催中のドン・シーゲル特集にて、『殺人捜査線』(1958年)鑑賞。サンフランシスコを舞台に、麻薬密輸を捜査する警察と犯人グループとの攻防を描くサスペンス・アクション。警察の捜査を丹念に描く前半はセミ・ドキュメンタリー調の犯罪捜査もの。中盤から密輸した麻薬を回収する2人組の運び屋(1人は若き日のイーライ・ウォラック)が登場すると、映画は急速にサスペンスが高まります。

 

 シーゲルの演出は、ファーストアクション(逃走車がクラッシュし、メインタイトルTHE LINEUPが出る絶妙のタイミング!)から、終盤の実景とスクリーンプロセスと俳優の演技がピタリとシンクロしたカーチェイスまで、冴え渡っていました。捜査陣より2人組の運び屋にフォーカスするドラマは後年の『殺人者たち』を、サンフランシスコの風景と高さを活かした激烈なアクションは『ダーティハリー』を予告しているようです。

 

 脚本は『夜の大捜査線』『ポセイドン・アドベンチャー』『キラー・エリート』等のスターリング・シリファント。緊迫感溢れる構成、人形に隠した麻薬を女の子が意外な用途で使ってしまうエピソードや、「4:30までには全て片付く」という台詞など、とても印象的。

 

 悪党側のキャラが濃くて、特にブツの受け渡しに現れる車椅子の男が強烈だったなあ。死に様がまた凄かった。若き日のイーライ・ウォラックは突然凶暴性を発揮する役柄で生き生きしていました。死に際の言葉を集めていると言う相棒役のロバート・キースも印象的。調べたら『荒野のガンマン』『シャーキーズ・マシーン』等のブライアン・キースの親父さんらしい。運転手役はどこかで見た顔だなと思ったら、アルドリッチ作品常連のリチャード・ジャッケル。事件を追う警部はエミール・マイヤー。先に見た『第十一号監房の暴動』では刑務所所長を演じていました。

 

 同劇場の特集は、60-70年代篇に突入。上映作品は『殺人者たち』『真昼の死闘』『突破口!』『ドラブル』の4本。どれも見てるけどスクリーンで見たことは無いので、上手いこと調整して行きたいなと思う。