Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『ダークグラス』(ダリオ・アルジェント)

 

 イタリアン・ホラーの名手ダリオ・アルジェント最新作『ダークグラス』鑑賞。池袋シネマ・ロサにて。1人で見に来てる女性のお客さんが結構いて、面白いホラー映画のニーズ、アルジェントの信頼度がうかがえる。出演イレニア・パストレッリ、アーシア・アルジェントアンドレア・ゲルペーリほか。

 

 事故で視力を失ったコールガールが、凶暴なストーカーにつけ狙われるサスペンス。アルジェントは過去に盲人を主人公とする『わたしは目撃者』(1970年)を監督している。カール・マルデン演じる盲目の元記者と少女のコンビが殺人事件の捜査をするミステリーだった。本作は『わたしは目撃者』と男女逆で、盲目の女性と少年のコンビが事件に巻き込まれる。

 

 正直言うとアルジェントはちょっと苦手。演出が一本調子だし、(脚本家出身なのに)お話の辻褄合わせに全く無関心で、派手な殺人シーンの演出にばかり注力しているのがどうも好きになれず。そこら辺は本作も同様なんだけど、御大80歳を超えての監督作だからか、力が抜けていて意外に悪くないなと思った。自立した意思を感じさせる主人公の佇まい、主人公と少年、盲導犬の関係性、日蝕が街を覆う冒頭のムード等。主人公のハンディがもっと映画的な面白さに繋がってくれると良かったのだが、その辺は意外にあっさりしていた。不必要に派手な残酷描写、映像より音楽が先に怖がって逃げていくみたいな選曲のセンスは相変わらずだったなあ。