Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『雨のなかの女』(フランシス・フォード・コッポラ)

 

 

 デニス・ホッパー見たさに『ランブルフィッシュ』、ナスターシャ・キンスキー見たさに『ワン・フロム・ザ・ハート』を見直して、いやコッポラいいよねと再評価の気持ちが高まった。『ゴッドファーザー』や『地獄の黙示録』といった大作ではなくて、味のある小品にコッポラの演出力と趣味の良さが現れているのではないかと。という訳で、初期作品の『雨のなかの女』(1969)を久しぶりに再見。

 

 自立を模索して家出した若妻(シャーリー・ナイト)と旅先で出会った無垢な男(ジェームズ・カーン)がアメリカを彷徨する。男女のロードムービーで、登場人物の過去を示すフラッシュ・バックなどいかにもニューシネマの時代らしい。しかし無法者ではなく平凡な主婦の反逆と放浪にフォーカスしている所が特別だ。シャーリー・ナイトの沈んだ表情と時折見せる激情。雨に濡れた街路、鏡を使った会話場面の演出など実に繊細。改めて傑作だと感動を新たにした。

 

 主人公が旅先で出会う二人の男を演じるのはジェームズ・カーンロバート・デュバル。二人の哀しい存在感がいい。ちなみに彼らは『宇宙大征服』『雨のなかの女』『ゴッドファーザー』『キラーエリート』と何度も共演している。

 

 原題The Rain People。劇中でカーンが語る。「雨でできた人間がいるんだ。泣くと涙になって溶けてしまう」と。そんなイメージなのか、オリジナルポスターはしみじみと良いデザイン。

 

 日本版ポスター。オリジナルを踏襲したこちらも良いデザイン。惹句がなかなか凄い。

「なぜ彼女は若い夫に不満なのか?行きずりの男の誘惑に涙の雨降らす新婚の女!」

そんな映画だっけなあ。新婚の女!って‥‥。