Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『淀川長治 映画ベスト100&ベストテン』

 

 昨年4月に読んだ『淀川長治 究極の映画ベスト100』 (河出文庫)は、『淀川長治 究極の映画ベスト1000』から選りすぐられた100本を紹介する「究極の映画ベスト100」ガイド。それに各年の淀川さんのベストテン、蓮實重彦との対談などを加えた新版『淀川長治 映画ベスト100&ベストテン』を見つけたので読んでみた。前回も掲載したが、100本は下記の通り。(淀川さんの1000本から、編集者が100本に絞ったもの)

 

イントレランス』『散り行く花』『キッド』『愚なる妻』『十誡』『ロイドの要心無用』『チャップリンの黄金狂時代』『キートンのセブン・チャンス』『戦艦ポチョムキン』『メトロポリス』『嘆きの天使』『自由を我等に』『街の灯』『雨』『グランド・ホテル』『或る夜の出来事』『大いなる幻影』『駅馬車』『風と共に去りぬ』『邂逅 (めぐりあい)』『チャップリンの独裁者』『果てなき船路』『レベッカ』『市民ケーン』『疑惑の影』『我が道を往く』『荒野の決闘』『美女と野獣』『赤い靴』『自転車泥棒』『ママの想い出』『第三の男』『サンセット大通り』『羅生門』『河』『恐怖の報酬』『禁じられた遊び』『西鶴一代女』『ライムライト』『シェーン』『終着駅』『七人の侍』『夏の嵐』『道』『エデンの東』『旅情』『死刑台のエレベーター』『戦場にかける橋』『大いなる西部』『大人は判ってくれない』『太陽がいっぱい』『甘い生活』『かくも長き不在』『処女の泉』『素晴らしい風船旅行』『ウエスト・サイド物語』『突然炎のごとく』『アラビアのロレンス』『奇跡の人』『鳥』『野のユリ』『コレクター』『アポロンの地獄』『暗くなるまで待って』『2001年宇宙の旅』『ジョニーは戦場へ行った』『ベニスに死す』『ゴッドファーザー』『ポセイドン・アドベンチャー』『スケアクロウ』『家族の肖像』『ザッツ・エンタテインメント』『ジョーズ』『アニー・ホール』『ブリキの太鼓』『ディーバ』『アマデウス』『カオス・シチリア物語』『冬冬の夏休み』『カイロの紫のバラ』『グッドモーニング・バビロン!』『ザ・デッド 「ダブリン市民」より』『八月の鯨』『ラストエンペラー』『霧の中の風景』『コックと泥棒、その妻と愛人』『ニュー・シネマ・パラダイス』『フィールド・オブ・ドリームス』『髪結いの亭主』『シェルタリング・スカイ』『シザーハンズ』『アダムス・ファミリー』『テルマ&ルイーズ』『さらばわが愛 覇王別姫』『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』『ピアノ・レッスン』『日の名残り』『オリーブの林をぬけて』『スモーク』『キッズ・リターン

 

 昨年読んでから約1年半、100本中、見たのは68本。前回の61本からそんなに変わってなかった。やはり自分はクラシック映画を見て無さ過ぎるなと反省。自分はシネフィルじゃないなと思うのはその点だ。世のシネフィルの皆さんはとにかくクラシック映画をきちんと押さえておられるので。それはともかく、見方を変えればまだ見てない名画がたくさんあるということなので、これから映画を見るお楽しみはまだまだあるなと。

 

 巻末には淀川長治蓮實重彦対談が収録されている。テーマは「1980年代映画」(対談が行われたのは1990年)。これが面白い。お二人でアメリカ映画の弱体化を嘆いている。蓮實先生はアルトマン、スコセッシ『ハスラー2』『アフター・アワーズ』を誉めていたり、ジョナサン・デミー(と書いてる)、アラン・ルドルフなどもちゃんとチェックしている辺りはさすが。オリバー・ストーンのことはお二人ともぼろくそに貶している。当時にしてすでにトム・クルーズのことは高く評価しているのが面白いなあ。タルコフスキーのことは「映画に対して不誠実」「映画以外のものを信じているように見える」と述べている。言いたいことは分かるような気がする。

 

 本書には個人的に見過ごせない誤植が一箇所ある。『アメリカの友人』(ジョン・カサヴェテス監督)ってちゃうわい!カサヴェテスなら『アメリカの影』だろうが、80年代のコーナーなので『グロリア』の間違いなのか、監督名が間違っているだけのか。『アメリカの友人』をカサヴェテスが監督したらどんな映画になっただろうと想像するのは楽しいけれどけれど。ヨナタンピーター・フォークリプリー=カサヴェテス、ヨナタンの奥さん=ジーナ・ローランズだったりして。何だか怖いなそれ。