Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『ラ・ネッサンス・ドゥ・ラムール』(ジョン・ケイル)

 ジョン・ケイル『ラ・ネッサンス・ドゥ・ラムール』(1993年)聴く。フィリップ・ガレル監督の『愛の誕生』の為に書かれたアルバムで、全23曲中10曲が映画に使用されている。


 ジョン・ケイルは、ルー・リードとともにヴェルヴェット・アンダーグラウンドの中心人物だったミュージシャン。一方フィリップ・ガレルは実験映画時代にアンディ・ウォーホルのファクトリーに出入りしており、ヴェルヴェット・アンダーグラウンドの歌姫ニコと恋愛関係にあった。ケイルとガレルのコラボレーションは「ニコつながり」と言えようか。


 『愛の誕生』(1993年)は、ガレルがニコとの恋愛関係を元に描いた三部作の一篇。舞台俳優のポール(ルー・カステル)が主人公。ポールは妻子がある身でありながら、若い愛人たちの間を行ったり来たりしている。子供の事を考えて一度は家に戻るが、また同じ事を繰り返す。一方、ポールの友人マルキュス(ジャン=ピエール・レオー)は恋人との別れに悩んでいる・・・。恋愛においての男の側の理屈、甘え、我儘、うつろい、そういったものが生々しく描き出されていた。


 個人的にいわゆる「恋愛映画」はあんまり好きではないけれど、ガレルの通称ニコ三部作(『秘密の子供』『愛の誕生』『ギターはもう聞こえない』)、近作『白と黒の恋人たち』『恋人たちの失われた革命』などは何故だかとても好きだった。


 『愛の誕生』では、ヌーヴェルヴァーグの名カメラマン、ラウール・クタールの素晴らしいモノクロ映像に、ケイルのピアノソロがそっと寄り添うように流れてとても印象的であった。こうして改めて音楽だけ聴いてみると、映画のBGMというよりは、まるで自分の中で鳴っている鼓動のようだ。ニコ三部作を見終えた時、まるで自分が恋愛を終えたかのような、取り返しのつかない気持に襲われたのを思い出した。


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