Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『怒りの山河』(ジョナサン・デミ)


怒りの山河』 FIGHTING MAD


 監督・脚本/ジョナサン・デミ
 製作/ロジャー・コーマン
 撮影/マイケル・ワトキンス
 編集/アンソニー・マグロ
 音楽/ブルース・ラングホーン
 出演/ピーター・フォンダ、リン・ローリイ、スコット・グレン、ジョン・ドーセット、ジーノ・フランコ
 (1976年・88分・アメリカ)


 『羊たちの沈黙』(1990年)でオスカーを受賞しメジャー監督の仲間入りを果たしたジョナサン・デミ監督であるが、ロジャー・コーマンの門下生としてキャリアをスタートさせた初期の頃には、女囚ものやカーチェイスものなどB級映画をせっせと作っていた。監督デビューは『女刑務所・白昼の暴動』(1974年)。コーマン製作の『残酷女刑務所』(1971年、ジャック・ヒル)に始まった女囚映画ブームに乗って作られた1作。撮影はタク・フジモト、音楽は元ヴェルヴェット・アンダーグラウンドジョン・ケイル


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 2作目は、コーマン製作のヒットシリーズ「ギャング・ママ」ものの1作『クレイジー・ママ』(1975年)。『血まみれギャング・ママ』(ロジャー・コーマン)、『ビッグ・バッド・ママ』(スティーヴ・カーバー)といった他の「ギャング・ママ」ものに比べると随分軽い仕上がりで、ユーモラスな要素が強調されているところがデミらしかった。


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 続く第3作目が怒りの山河(1976年)だ。


 トム(ピーター・フォンダ)は都会生活に嫌気が差し、息子とともに故郷のアーカンソーへと帰ってきた。石炭の利権を巡り強引な土地買収を行なう悪徳業者により故郷の町は荒み、父(ジョン・ドゥーセット)の経営する農場も度重なる嫌がらせを受けていた。トムの帰郷を祝うパーティの日、弟チャーリー(スコット・グレン)夫婦が一味によって殺害されてしまった・・・。


 耐えに耐えた主人公がついに爆発し激しいアクションを見せるという、典型的な復讐もの・自警団もの。物凄い傑作とかジャンルを代表する1本とかいうほどではないけれど、これはこれで充分に楽しめた。酒場のカントリー・バンドの演奏を盛り込んだり、主人公が使う武器がアーチェリーだったり、細部にちょっとした一工夫が凝らされており飽きさせない。(思えば『女刑務所・白昼の暴動』『クレイジー・ママ』もそういう映画であった)


 音楽はブルース・ラングホーン。ボブ・ディランの名曲『ミスター・タンブリンマン』のモデルとなった人物として有名。そのせいか、主人公の息子はディランという役名である。ラングホーンはデミ監督の『メルビンとハワード』(1980年)でも音楽を担当している。


 主演はピーター・フォンダ。フォンダ自身には特にアクション・スターというイメージはないけれど、『悪魔の追跡』『ダーティ・メリー・クレイジー・ラリー』『アウトロー・ブルース』といったカーチェイスものに多数出演している。凝った役作りなど興味がないのか、どの映画でも同じようなサングラスとファッションで出演しているんだよね。ヒロインはリン・ローリイ。リン・ローリイといえば『処刑軍団ザップ』『ザ・クレイジーズ』『シーバーズ』とB級一筋の女優さん。脇役では、冒頭で殺される主人公の弟役でスコット・グレンが出ていた。スコット・グレンは出演作で死ぬ確率がかなり高いような気がするんだよなあ。


 それにしても、この時代のB級映画ならではの劣悪な画質・音質には、既視感を激しく呼び覚まされた。昔ローカル局で日曜の午後に放映されていたTVの吹替洋画劇場を思い出したりして。