Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『THE LOST SUZUKI TAPES Vol.2』(鈴木慶一)


 鈴木慶一氏の未発表音源集第2弾『THE LOST SUZUKI TAPES Vol.2』(12/14リリース)。曲としてある程度完成した型で収録されていた『Vol.1』に対し、こちらは完全なるデモ・トラック集である。歌詞が出来ていないので鼻歌状態のものがあったり、デッキを操作する音やバックにTVの音が入り込んでたりして、思いっ切りパーソナルな雰囲気なのだ。貴重と言えばかなり貴重なものばかりなんだけど、曲の体を成していないものも多いので、コアなマニア向けのディスクかなあと思う。


 収録曲は、


 M-1.「ウサギと私」(作詞/高橋修 作曲/鈴木慶一
 M-2.「ヘンタイよい子の歌」(作詞/糸井重里 作曲/鈴木慶一
 M-3.「エスプレッソで眠れない」(作詞/糸井重里 作曲/鈴木慶一
 M-4.「花咲く乙女よ穴を掘れ」(作詞/糸井重里 作曲/鈴木慶一
 M-5.「BLDG(ジャックはビルを見つめて)」(作詞・作曲/鈴木慶一
 M-6.「大切な言葉はひとつ「まだ君が好き」」(作詞・作曲/鈴木慶一
 M-7.「Eight Melodies」(作詞/Linda Hennrick 作曲/鈴木慶一田中宏和
 M-8.「サターンバレーのテーマ」(作曲/鈴木慶一) 
 M-9.「Pollyanna」(作詞/Linda Hennrick 作曲/鈴木慶一) 
 M-10.「All that I needed(was you)」(作詞/Linda Hennrick 作曲/鈴木慶一) 
 M-11.「10時間」(作詞・作曲/鈴木慶一
 M-12.「白と黒(WHITE AND BLACK)」(作詞・作曲/鈴木慶一
 M-13.「はい!はい!はい!はい!」(作詞/鈴木博文 作曲/鈴木慶一渚十吾
 M-14.「GOD SAVE THE MEN(やさしい骨のない男)」(作詞・作曲/鈴木慶一
 M-15.「サラダボウルの中の二人(ME AND MY GIRL IN SARADBOWL)」(作詞/鈴木慶一 作曲/鈴木慶一・David Motion)
 M-16.「アメリカのELECTRICITY CO.」(作詞/鈴木慶一 作曲/鈴木慶一鈴木さえ子


 収録されているのは、80年代初頭〜90年代までの音源。女性アーティストに提供した楽曲のデモが、M-1(野宮真貴)、M-3(杏里)、M-16(鈴木さえ子)。80年代の雑誌「ビックリハウス」のイベントで演奏された「ヘンタイよい子の歌」のデモ(M-2)。「ヘンタイよい子の歌」の完成版はライヴ・アルバム『ワースト・オブ・ムーンライダーズ』に収録されている。後はビートニクス(M-6)、ムーンライダーズ(M-4、M-5、M-11、M-13)、ソロ・アルバム『SUZIKI白書』(M-12、M-14、M-15)、そして『マザー』関連(M-7〜M-10)。


 ビートニクスのM-6「大切な言葉はひとつ「まだ君が好き」」、ソロ・アルバムのM-14「GOD SAVE THE MEN(やさしい骨のない男)」はまだ歌詞が入っていなくて、ハミングで歌われている状態。これが完成版よりもさらにお洒落な雰囲気なので驚いた。このメロディーにあの情け無い男の歌詞を乗っけようというのが面白いなあ。M-4「花咲く乙女よ穴を掘れ」やM-11「10時間」といったライダーズの曲のデモはまだシンプル。完成版ではいかに込み入ったアレンジが施されているか分かって興味深い。


 メロディメーカーとしての慶一氏の姿を垣間見れるのは『マザー』関連の曲だ。M-7「Eight Melodies」は、「一つ目の曲です。(演奏)ガチャッ(デッキを止める音)」「二つ目の曲です。(演奏)ガチャッ(デッキを止める音)」・・・ていう感じで8つのメロディーの断片があって、最終的に連なったメロディーが流れるという形で収録されている。大袈裟に言うと、かの名曲誕生に立ち会っているかのような興奮が味わえる興味深いデモ・トラックであった。



The Lost SUZUKI Tapes 2

The Lost SUZUKI Tapes 2