Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『東京一は日本一』(ムーンライダーズ)

東京一は日本一

東京一は日本一


 ムーンライダーズのアルバムを振り返るコーナー、今年は主なベスト盤からスタートしたいと思います。


 多くのレコード会社を股に掛けて活動を続けたムーンライダーズには、複数のベスト盤が存在する。それはあくまで「ベスト盤」であって、「グレイテスト・ヒッツ」ではない。これってファンとしては複雑な心境だけど、シングル・ヒット曲がないままに35年間も活動を継続出来た(コンスタントにアルバムをリリース出来た)というのはやはり驚くべき事ではないだろうか。


 まずは、1981年5月にリリースされた『東京一は日本一』。『火の玉ボーイ』から『カメラ=万年筆』まで在籍したクラウン時代のベスト・アルバムだ。タイトルには当時のライダーズの位置づけが表現されているようだ。


 収録曲は、


 M-1.「火の玉ボーイ」
 M-2.「マスカット ココナッツ バナナ メロン」
 M-3.「Beep Beep Be オーライ」
 M-4.「スタジオ・ミュージシャン」
 M-5.「いとこ同士」
 M-6.「モダーン・ラヴァーズ」
 M-7.「鬼火」
 M-8.「彼女について知っている二、三の事柄」
 M-9.「無防備都市
 M-10.「Elephant」
  (アナログ盤では、M-1〜5がSIDEA、M-6〜10がSIDEB)


 クラウン時代のアルバムから比較的キャッチーな9曲と、シングル曲「Elephant」(作詞・作曲/鈴木慶一)が収録されている。「Elephant」 は1981年に「ヴィデオ・ボーイ」とカップリングで発売された曲で、これがアルバム初収録。前年に射殺されたジョン・レノンに捧げられた曲だ。追悼曲としてはかなり早い時期のリリースと言えよう。 追悼曲とは言っても何ら辛気臭いものではなくて、滅茶苦茶ポップで痛快な曲だ。ポップさから言えばこのベスト盤の中でも突出していると思う。以前誰かが「日本の洋楽バンドの最高峰・ムーンライダーズ」という珍妙な表現を使っていたけど、「日本の洋楽」という表現はこの曲を聴くと何となく納得できるような気がする。今聴き返してみると、洋楽/邦楽の境目なんて普通にクリアしてると思うけれど。


 実はベスト盤『東京一は日本一』と『Best of MOONRIDERS 1982-1992 Keiichi Suzuki sings MOONRIDERS』と『BEST OF LUCK!』(ライナーは江口寿史氏)の3枚は手元に無い。ライダーズの魅力を教えようとして誰かに貸したきり帰ってこなかった。最早誰に貸したかすら思い出せないけれど。その誰かが今でもライダーズ聴いててくれる事を祈る。