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『最前線』 MEN IN WAR
監督/アンソニー・マン
脚本/フィリップ・ヨーダン(ベン・マドウ)
撮影/アーネスト・ハラー
音楽/エルマー・バーンスタイン
出演/ロバート・ライアン、アルド・レイ、ロバート・キース、ヴィク・モロー、ジェームズ・エドワーズ
(1957年・100分・アメリカ)
先日所用あって立ち寄った柏の某古本屋で、アンソニー・マン監督の『最前線』を発見。『レッドパージ・ハリウッド』を読んで以来、ずっと見たかった映画なので、速攻チェックしてみた。
舞台は朝鮮戦争の最前線。ベンスン中尉(ロバート・ライアン)率いる小隊は、周囲を敵軍に囲まれて孤立していた。味方のいる高地を目指して移動を続けるが、茂みに隠れた敵兵に1人、また1人と犠牲になってゆく・・・。
ベトナム戦争以前のハリウッド製戦争映画といえば、好戦的な勇ましいものを想像するが、『最前線』は全編を不穏で厭戦的なムードに覆われた極めて異色な作品だ。異国の地で孤立し、最早模範を示す指導者も無く、疲弊しきった兵士たちが終りの見えない消耗戦を強いられる辛い映画である。本作と同じ朝鮮戦争を舞台としたサミュエル・フラーの『鬼軍曹ザック』が、好戦・反戦を超えた戦場でのモラルみたいなものを描いていたのを思い出す。
主演はロバート・ライアン。『狼は天使の匂い』『ワイルドバンチ』等、常に「疲れ顔」が印象的なライアンにとってはまさにハマり役だ。濃い無精髭、ヘルメットを外した時の髪の乱れ具合、次の動作に移るときの緩慢な動きなど、自信喪失しかかった中尉を体現し素晴らしい。シェル・ショックで硬直した大佐を演じるロバート・キース、大佐に忠義を尽くす軍曹を演じるアルド・レイも強烈。小隊のメンバーには、後にTV『コンバット!』で頼れる軍曹を演じるヴィク・モローの姿も。本作では精神を病んで戦闘意欲を失った若い兵士を演じている。
本編のクレジットはフィリップ・ヨーダンとなっているが、実際に本作の脚本を執筆したのはベン・マドウ。赤狩りの被害に遭い仕事を失っていたベン・マドウに対し、フィリップ・ヨーダンがフロントとなって名前を貸していたのだ。この辺の事情は『レッドパージ・ハリウッド』に詳しい。監督はフィルム・ノワールやジェームズ・スチュアート主演の西部劇で知られるアンソニー・マン。砲撃の合間を縫って駆け抜ける場面、林間の地雷原を進行する場面、そして終盤の高地での攻防戦、と地形を巧みに生かした緊張感に満ちた演出が素晴らしい。ベン・マドウの緻密な脚本と、マンの演出が結びついた見応えのある戦争映画であった。
レッドパージ・ハリウッド――赤狩り体制に挑んだブラックリスト映画人列伝
- 作者: 上島春彦
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