Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『ラシター&マーティン〜砂漠の10万ドル』(J.R.マーチェント)

『ラシター&マーティン〜砂漠の10万ドル』 100,000 DOLLARI PER LASSITER


 監督/J.R.マーチェント(ホアキン・ルイス・ロメロ・マルチェント)
 脚本/セルジオ・ドナッティー
 撮影/ラファエル・パチェコ、フルヴィオ・テスティ
 音楽/マルチェロ・ジョンビーニ
 出演/ロバート・ハンダー、ルイジ・ピスティッリ、アンドリュー・レイ、パメラ・チューダー、ロベルト・カマルディエル、ベニート・ステファネッリ
 (1966年・97分・イタリア)


 日本劇場未公開(TV放映のみ)のマカロニウエスタン鑑賞その3『ラシター&マーティン〜砂漠の10万ドル』。先の『カーバー&パコ』同様に、まるでラシターとマーティンという2人のガンマンのバディものみたいな邦題だけど、そういうお話ではない。しかも砂漠すら出てこないんだから全くいい加減な。マカロニらしいといえばそれまでなのだが・・・。


 マカロニウエスタンといえばキャラの立った主人公と敵役、というシンプルな人物関係がほとんどで、それほど複雑なものはない。本作はマカロニにしては珍しく群像劇の趣がある。町を暴力で支配する車椅子の大ボス・マーティン、反抗的なその息子、大ボスと因縁の関係にあるフランク、シングルマザーで子供たちとともに強盗を働く逞しいヒロイン、等々・・・。マーティンの部下たちもなかなか個性的な面構えが揃っている。一応主人公であるラシター(ロバート・ハンダー)は、ほとんど狂言回しみたいな役どころで、ガン・プレイよりも頭脳プレイで難局を切り抜けるマカロニには珍しいタイプだ。薄汚いのが定番のマカロニ・ガンマンの中では珍しくこざっぱりしたファッションをしている。ルックスはウディ・ハレルソンを引き伸ばしたみたいなしゃくれ馬面でハンサムとは言い難いが。


 美術は、セルジオ・レオーネ監督作品で知られる名手カルロ・シーミ。個性的な登場人物たちをメリハリの効いた衣装で彩っている。軽快な音楽は『西部悪人伝』のマルチェロ・ジョンビーニ。


 傑作とかそういうものでもないけれど、マカロニにしては毛色の変わった趣向が楽しめた。ラストシーンが子供の姿というのもちょっと新鮮だったなあ。


 2001年辺りからマカロニウエスタンの鑑賞記録をつけはじめ、『ラシター&マーティン』で丁度100本目となった。しかし、マカロニは500本以上とも言われており、ソフト化されていない作品や日本未公開作品も数多い。いやはやマカロニの全貌は砂塵の彼方である。マカロニ道を追求する諸先輩方のブログを拝見すると、輸入版DVD等をチェックしたりロケ地を訪問したりその情熱たるや素晴らしい。マカロニ好きのはしくれとして今後も探求を続けていきたい。