Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『女獄門帖 引き裂かれた尼僧』(牧口雄二)

女獄門帖引き裂かれた尼僧 (日本カルト映画全集)

女獄門帖引き裂かれた尼僧 (日本カルト映画全集)


『女獄門帖 引き裂かれた尼僧


 監督/牧口雄二
 脚本/志村正浩
 撮影/塚越堅二
 音楽/渡辺岳夫
 出演/田島はるか、ひろみ摩耶、芹田かおり、藤ひろ子、佐藤美鈴、内村レナ
 (1977年・69分・日本)


 先の『牛裂きの刑』に続いて、牧口雄二監督『女獄門帖/引き裂かれた尼僧をチェック。邦画カルト映画といえば必ずタイトルが挙がるその筋では有名な作品だ。70分弱の上映時間にハイテンションのエロとバイオレンスがてんこ盛り。東映のエロティック時代劇、とりわけ「異常性愛路線」と呼ばれた一連の作品の中でも特に強烈な作品である。


 遊郭を足抜けしてやくざ者に追われる女郎(田島はるか)が逃げ込んだ山奥の尼寺。縁切り寺として名高いその場所は、実は・・・というお話。映画秘宝では「時代劇版『悪魔のいけにえ』」なんて紹介されていたっけ。どういう映画なのかその説明だけで分かる人には充分伝わるであろう。山奥にひっそりと建つ尼寺、祭壇のミイラ、白塗りの使用人、水桶に沈む生首、沼地に捨てられた死体・・・。「異常性愛路線」の「異常」の方に著しく偏った結果、単なるエロ映画を超えて怪奇映画の領域まで達してしまったという感じだ。


 女優陣は今や名前を見ても「誰?」という面々だが、皆個性的であり、エロにアクションにと体当たりの演技を見せる姿は尊敬に値する。東映やくざ映画等でお馴染みの名脇役たち(成瀬正、小林稔侍、志賀勝汐路章佐藤蛾次郎片桐竜次ら)の怪演も見どころ。特に白塗りで尼寺の使用人を演じる志賀勝、ヒロインを追うやくざ者を演じる汐路章不能)、佐藤蛾次郎(母乳責めで憤死)のコンビには笑わせてもらった。


 クライマックスでは、燃え上がる尼寺で女たちの死闘が繰り広げられる。単なるエロ映画と侮るなかれ。ここには紛れもない映画的な興奮がある。感動した。いや真面目な話。