Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『緑色の髪の少年』(ジョゼフ・ロージー)

緑色の髪の少年 [DVD]

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『緑色の髪の少年』 THE BOY WITH GREEN HAIR


 監督/ジョセフ・ロージー
 脚本/ベン・バーズマン、アルフレッド・ルイス・レヴィット
 撮影/ジョージ・バーンズ
 音楽/リー・ハーライン
 出演/ディーン・ストックウェル、ロバート・ライアン、パット・オブライエン、バーバラ・ヘイル
 (1948年・82分・アメリカ)


 ジョゼフ・ロージー監督初期の作品『緑色の髪の少年』見る。反戦映画の名作と謳われる本作、監督が赤狩りで亡命を余儀なくされたジョゼフ・ロージーということもあって、もっとハードな演出を想像していた。実際には児童文学的というか、一風変わったファンタジーといった肌触りの映画であった。


 丸坊主の家出少年(ディーン・ストックウェル)が警察に保護された。少年は一言も喋ろうとしなかったが、面接した医師(ロバート・ライアン)の丁寧な応対に、ようやく自らの生い立ちを語り始める。少年は戦災孤児で、親族を方々たらい回しにされて、遠縁の老人(パット・オブライエン)の元で暮らしていた。平穏な学園生活を送っていたが、ある日突然、髪が緑色に変わってしまった。学校や地域で好奇の視線に晒された少年は家を飛び出すが・・・。


 実際見てみると、戦争に関係する部分はそれほど多くない。戦後間も無い頃(1948年)の製作なので、「戦災孤児」というだけで今とは大分リアリティが違ったのだろう。映画ガイド本では、少年の髪が変色するきっかけは「戦争の恐怖で髪が緑色に」と紹介されていることが多いけれど、実際には「何故か色が変わっちゃった!」というようなユルい描かれ方である。最初は髪の色が変わった事を喜んで鏡に向かっておどけて見せたり、近所の女の子に誉められていい気分になったりするのだ。全体的には反戦映画というよりも、少年時代の繊細な感情を描いたドラマという印象が強い。自分が他の子供と違うということで一喜一憂する感覚が上手く描かれていると思った。加えて暗闇が怖いという感覚や、異物を排除しようとする子供特有の残酷さもきちんと描かれている。


 個人的に、この映画でいいなあと思ったのは、少年の話を辛抱強く聞く医師(ロバート・ライアン)や少年を励ますおじいさん(パット・オブライエン)、担任の先生といった「ちゃんとした大人」が登場することであった。大人対子供、というような単純な図式に陥っていないのはとても好ましいと思う。


 主人公の少年を演じているのは、現在も名脇役として活躍を続けているディーン・ストックウェル。いかにもハリウッド的な子役の可愛さではなく、ほとんど全編暗い目でむっつりと不機嫌そうな表情を浮かべているのが面白い。戦災孤児の孤独感、気丈に振舞ういじらしさが伝わってくる名演だ。この少年が、やがてリンチの『ブルー・ベルベット』でおっかないオカマのベンを演じるかと思うと感慨深い。