昨日の続きです。最近見た映画、または大分前に見たけど感想を書きそびれていた映画について、ここらでまとめて感想を書き記しておきます。今回は邦画アニメーション編。
『空飛ぶゆうれい船』(池田宏)
町山智浩氏が推していたアニメ映画をレンタルでチェック。1969年(!)に「東映まんがまつり」で公開された60分の中篇。原作は石森章太郎、スタッフとして宮粼駿が参加しているらしいということ以外には何の予備知識も無く見始めた。確かにこれはトラウマ級の作品だと仰天した。巨大企業の陰謀、メディア操作で悪役とされていたゆうれい船が実は正義の側であったという逆転、というストーリーも衝撃的だが、死人続出の展開や、流行のジュース(『ロボコップ』みたいに、劇中に繰り返しTVCMが挿入される)を飲んだ人間が消滅してしまうとか、巨大なカニの襲撃とか、悪夢的な映像もインパクトがある。
(『空飛ぶゆうれい船』 監督/池田宏 脚本/辻真先、池田宏 音楽/小野崎孝輔 出演(声)/野沢雅子、田中明夫、里見京子、岡田由紀子、名古屋章、納谷悟郎 1969年 60分 日本)
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『おおかみこどもの雨と雪』(細田守)
最新作『未来のミライ』が公開中の細田守監督の旧作。『時をかける少女』『サマーウォーズ』が好きだったので期待していたのだが、これがどうにも辛気臭い映画で参った。無理やり「名作路線の映画を作った」みたいな堅苦しさがあって、前作までにあった伸びやかな魅力に乏しいと思う。未婚の母が田舎暮らしを始める辺りに何か描写不足があって(彼女は両親や親族がいないのだろうか)、無理やりな感じがするのも一因か。中途半端にリアリティを出そうとするよりも、狼と恋愛してもいいじゃないか、母と子(狼とのハーフ)だけで暮らしてもいいじゃないか、映画なんだから(否、映画だからこそ)、という演出を見たかったと思う。
(『おおかみこどもの雨と雪』 監督/細田守 脚本/細田守、奥寺佐渡子 音楽/高木正勝 出演(声)/宮崎あおい、大沢たかお、黒木華、西井幸人 2012年 117分 日本)
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『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』(原恵一)
名作の誉れ高い『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』、やっと鑑賞。これ最早17年も前の作品なのか。下らないギャグとユルいアクションの中に描き出される世代の断絶と次世代に希望を託そうというテーマは明確で、なるほど面白い映画であった。あくまで「クレしん」のフォーマットの上に成立しているところが痛し痒し。それを言うなら『うる星2ビューティフルドリーマー』も同じか。すでにオトナ帝国の側にいる自分にとっては、もう70年代で止まっちゃってもいいんじゃないのくらい思うところもあるので、津嘉山正種がイイ声で演じる悪役の葛藤には響くものがあった。
(『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲』 監督・脚本/原恵一 撮影/梅田俊之 音楽/荒川敏行、浜口史郎 原作/臼井儀人 出演(声)/矢島晶子、ならはしみき、藤原啓治、こおろぎさとみ、小林愛、津嘉山正種 2001年 89分 日本)
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丁寧に作ってあって悪口を言うほどひどい映画だとは思わないが、世界観の広がりが感じられない妙に小ぢんまりとした仕上がりが気になった。同監督の『借り暮らしのアリエッティ』もそんな印象だった。そもそも主人公が魔法を手に入れたときめきみたいなものが感じられないのが奇妙だった。最後は魔法を捨ててしまうし、大人になることと引き換えに魔法を捨てるというお話は分かるけれど、魔法を否定してしまっては何のための映画なのか、何のためにアニメーションなのか、と思うなあ。
一緒に見ていた娘は、少年が魔法の実験で変身させられそうになる場面(青白い魔法の光の中で成長し天使のような羽根が生えてくる)に何か引っかかったようで何度も違和感を口にしていた。どうやら娘は「冴えない少年が美青年に成長して天使の羽根まで生えてきたのに何で悪いの」と思ったようで。物語の上では完全に間違った解釈なんだけど、子供らしい誤読が面白い。って単なる美少年好きだったらどうしよう。
(『メアリと魔女の花』 監督/米林宏昌 脚本/坂口理子、米林宏昌 撮影/福士享 音楽/村松崇継 原作/メアリー・スチュアート 出演(声)/杉咲花、神木隆之介、天海祐希、小日向文世、佐藤二朗、満島ひかり、大竹しのぶ 2017年 102分 日本)
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やっと見ました『君の名は。』。いわずと知れた2016年の大ヒット作。アニメーションには何の偏見も無いつもりだが、『秒速5センチメートル』を見て監督の世界観とは相容れないものを感じたので、他の作品はチェックしていなかった。なので、本作もいかに記録的な大ヒット作とはいえ鑑賞の優先順位は大分低くて、公開当時劇場まで足を運ぶには至らなかった。
本作は『秒速5センチメートル』とは違って、物凄くキャッチーで見易いという印象。演出に堂々たるメジャー感があり、これなら大ヒットも納得という気がした。なんだけど、基本的な世界観というか、世界の切り取り方みたいなものはなんら変わっておらず、気を抜くと男性ボーカルのPVみたいな感じになっていたり、内省的なボソボソしたモノローグが続いたり、やっぱり運命の女性とどこかで繋がっているという(ライムスター宇多丸氏言うところの)赤い糸ファンタジーだったり・・・。まあここまでやったなら「作家性」と言ってもいいのかも知れず、熱狂的なファン層もあるようなので、これはこれで良いのかもしれない。同時進行していたと思われた男女の話が、実は3年間の時間のずれがあったとか、SFっぽい仕掛けは意外に楽しかったし、3.11以降を思わせる描写にもある種の必然性を感じられて良かったと思う。妻は、主人公男女を演じる声優の演技が良かったのではないかと言っていた。確かに2人の好演が外向きの勢いを生み出していたと思う。
(『君の名は。』 監督・脚本/新海誠 撮影/福澤瞳 音楽/RADWIMPS 出演(声)/神木隆之介、上白石萌音、谷花音、長澤まさみ、市原悦子、成田凌、悠木碧、花澤香菜 2016年 107分 日本)
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この項続く。