- 作者: 小林信彦
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2012/05/09
- メディア: 単行本
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週刊文春に長期連載されている小林信彦氏のエッセイ「本音を申せば」シリーズ。氏の軽妙な文章が好きなので、週刊文春を読む機会がある時(たいていは病院の待合室)には真っ先に目を通すようにしている。新作旧作織り交ぜた映画鑑賞の感想、エンタメについての年季の入った豊富な薀蓄と、身辺雑記が並列されていて読みやすく面白い。書籍化されたもので未読だった3冊を続けて読んでみた。
『非常事態の中の愉しみ』は東日本大震災のあった2011年に書かれたもので、震災というよりも原発事故と政府の対応に対する不安が執拗に書かれている。2013年に書かれた『「あまちゃん」はなぜ面白かったか?』は、大島渚監督の死で始まり、大瀧詠一の死で終わる・・・というのは分かるとして、「あまちゃん」ブームに着目して楽しんでいるところが小林氏らしいなと思った。2020年東京オリンピック反対と、原発の話題も繰り返し出てくる。2015年に書かれた『古い洋画と新しい邦画と』ではいよいよ老人の日常エッセイの比率が高くなってきたような印象。新作映画をなかなか見に行けないのを「これでは何のために生きているのかわからなくなる」とこぼしている。
何しろ小林氏はもう80代のご高齢である。酷暑に参った話や体調の不調の話も多い。「子供のころの日常や亡くなった方々を想い出すことが多い。暗闇で目がさめて、自分がいつ、どういう場所にいるのかと疑う。幼児のころの家と現在の家の区別がつかないのである。ほんの少し経つと、わかってくるのだが、それでも、さっと起きてーというわけにはいかない。」などという記述があったりしてギョッとする。
週刊文春の連載は、しばらく続いていた闘病記を一応終えて、ようやく従来の身辺雑記スタイルに戻って一安心。病院でのあれこれを書き記した部分は正直読んでいて辛かった。
それにしても。80歳になってもこんなに軽妙な文章を書けるんだなあ。俺には無理かもなあ。そもそも80歳まで生きられる自信が無い。
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