Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『Last Letter』(岩井俊二)

 

 岩井俊二監督『Last Letter』(2020年)鑑賞。「まさかそんな」と突っ込みたくなるような不自然極まりないシチュエーションでお話が進んでいくけれど、さすが手慣れた演出で最後までちゃんと飽きずに見てしまった。監督のこだわりどころはちゃんと伝わってくるので、好みはともかく、これはこれでアリなんじゃないかと思います。終盤に登場する豊川悦司中山美穂が物凄く荒んだ存在感を放っていて、夢見がちな物語(主人公)に亀裂を入れるのが見どころ。宮城県でロケしているので、個人的には見知った地名が頻出するのも面白かった。

 

 本作はムーンライダーズ案件でもあって。慶一さんが主人公の祖父役で出演しています。岩井監督は初期ムーンライダーズのファンとのことで、これまでも慶一さんは岩井作品にたびたび顔を見せています。『Love Letter』ではヒロイン(中山美穂)の死んだ恋人の父親役。奥さん役は加賀まりこでした。『PICNIC』は精神病院を脱走した3人の男女が出会う牧師役。「塀の上で」芝居をするというマニアックなオマージュ。『スワロウテイル』ではレコード会社の重役という役どころ。「昔アグネス・チャンのバックで・・・」と楽屋落ち的セリフがあったりしました。本作は慶一さんの他にも、主人公の義母は水越けいこ、割に重要な役で小室等が、同窓会の場面では先生役でさとう宗幸が出てたりして、脇役でシンガーソングライターが出演していました。

 

『Last Letter』 

監督・脚本/岩井俊二 撮影/神戸千木 音楽/小林武史 

出演/松たか子広瀬すず、森七菜、神木隆之介福山雅治庵野秀明豊川悦司中山美穂鈴木慶一木内みどり小室等水越けいこ 

2020年 日本