Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

東京の映画館で知人に出会う確率とは 

 

 自分が生まれ育った町には1軒だけ映画館がありました。話題作となれば友達と連れだって見に行ったり、狭い町なので知り合いと合う確率も高かった。

(その映画館について書いた以前の記事 https://kinski2011.hatenadiary.org/entry/20180326/p1

 

 上京してからこれまでに随分と映画館に通いましたが、さすがに東京都内の映画館で知り合いに出会う確率は低いだろう思います。そもそも映画館の数が田舎とは桁違いに多いし、同じ日時の同じ時間帯に見に行く確率と言うのも低いだろうと。同じ映画館に通いつめれば常連さんに会うことはあるのかもしれませんが。

 

 自分はこれまでに4回、映画館で知り合いと出会ったことがあります。〇十年に4回というのが多いのか少ないのかは分かりませんが。

 1回目は大学1年の頃、今はなき五反田の名画座で『ラビリンス』『地球に落ちて来た男』のデヴィッド・ボウイ主演二本立て。高校時代の同級生Nさんと偶然にも一緒になった。彼女はボウイのファンだったので、見に来ていても不思議じゃなかったとはいえ、日時まで一緒になるとは。「俺はこの女と何かあるのだな」などとつい勘違いしたくなるような嬉しい出来事ではありました。大いなる勘違いだったけど。

 

 2回目は大学2年の頃、これも今はなき千石の三百人劇場ジョン・フォード特集をやった時。作品は『男の敵』『アパッチ砦』の二本立て。『男の敵』を見終えて、場内に灯りがついたら、すぐ近くに大学の先輩Gさんが。千石駅は通っていた大学から地下鉄で一本だったし、シネフィルのG先輩だったのでこれはそんなに驚かなかった。

 

 3回目は大学3年生の頃、渋谷ユーロスペースレオス・カラックスの『ボーイ・ミーツ・ガール』を見に行った時。これまた高校時代の友人K君と出会った。後にK君と飲み会で同席する機会があって、あの時ユーロスペースで会ったよねと言ったら「そうだっけ?」と否定されてしまった。彼が忘れてしまったのか、何か不味いことでもあったのか。それとも私の記憶違いだったのか。

 

 4回目は社会人になってから。新宿でブライアン・デ・パルマの『スネーク・アイズ』を見た時。大学の後輩O君とばったり。他ならぬデ・パルマの新作ということで見に行くのは当然としても、この東京で、狙いすましたかのように同じ時間帯で・・・というのが不思議だった。O君は彼女連れだったので、何だか気まずそうだったのを覚えています。

 

 それ以来、映画館で知り合いに出会ったことはありません。映画館に行く回数が激減したせいもあるし、出合いそうな知り合い自体が(様々な事情で)減ってしまったというのもある。でも、今年で言えば、カーペンター作品リバイバルで『ザ・フォッグ』見に行った時など、学生時代の知り合いに会いそうな気がしました。そんな気配を感じるというか。

 

 今回の話は単なる思い出話、特にオチはありません。しいて言うならば、映画館で映画を見るという事は、そんな出来事とこみの「体験」であり、それ故に印象深く記憶に刻み込まれるものだなということです。