Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『イメージの本』(ジャン=リュック・ゴダール) 

 

 早稲田松竹のレイトショーにて『イメージの本』(2018年)鑑賞。先日亡くなったジャン=リュック・ゴダール監督の遺作です。客席はかなり埋まっていて、意外に若い観客が多かった。死してなおゴダールへの関心の高さが伺えます。     

 

 自作を含む映画(『キッスで殺せ』『大砂塵』『若き日のリンカーン』『我輩はカモである』『カラビニエ』etc..)、海外、文学、報道映像等々、様々な映像の怒涛のようなコラージュ。ゴダール好みの雲、波、お尻、といったモチーフに『さらば、愛の言葉よ』で加わった犬の映像も少々。『映画史』以降お馴染みのシネ・エッセイですが、映像の繋ぎもぶつ切りの音声もこれまで以上に荒々しい。引用される映画の映像もダビングを繰り返した裏ビデオ(変な例えで失礼)みたいな画質で、目に麗しいという感じではありません。素直に気持ち良くはさせてくれないというか。さらに全編にゴダール本人のナレーションが流れ、これが異様に圧が強くて驚きます。終盤など音響効果も相まってゴダール爺さんに説教食らってるような気分になります。

 

 全編通して見るとほとんど「老人の意識の流れ」そのもののようにも思われます。またゴダールの遺作であるという前提で見ているせいか、遺言状のようにも見えましたね。最後は「希望」という言葉が口にされていました。それより気になったのは「悲しみ方が足りないから世の中が良くならない」というような言葉でした。あれは何の引用なんだろうか。

 

 さすがに仕事明けに見るには向いていない映画で、鑑賞後は目が疲れて頭痛が酷かった...。でも良い気分転換になりました。他のお客さんたち(特にゴダール初心者)はどう思ったんだろう。

 

『イメージの本』 LE LIVRE D'IMAGE        

監督・脚本・ナレーション/ジャン=リュック・ゴダール 撮影/ファブリス・アラーニョ

2018年 スイス/フランス