『らせん階段』（ロバート・シオドマク）

らせん階段 [DVD]

　アマプラにて、ロバート・シオドマク監督『らせん階段』（1946年）鑑賞。主人公は大邸宅で使用人として働くヘレン（ドロシー・マクガイア）。ヘレンは火事で家族を失った過去のトラウマから声を出すことができない。折から障害を持つ女性ばかり狙った連続殺人事件が発生、ヘレンが使用人として働くお屋敷にも侵入者が‥‥。原作はヒッチコックの『バルカン超特急』のエセル・リナ・ホワイト。

　過去のトラウマで声を出す事ができない主人公（ドロシー・マクガイア）が連続殺人犯に狙われるサスペンス。主人公の抱えたトラウマ、弱者ばかりを狙う殺人犯の異常性、意外な決着の付け方にノワールが香る。大邸宅内の位置関係の見せ方、階段、電話ブース、ブランデー、蝋燭といった小道具の活かし方にシオドマクの演出が光る名編だ。表題のらせん階段で展開するクライマックスの切れ味は素晴らしい。陰影に富んだ撮影は『過去を逃れて』『キャットピープル』『ヒッチ・ハイカー』等ノワール系の名作を手掛けたニコラス・ムスラカ。

　本筋とは関係ないが、冒頭に主人公たちがサイレント映画を見ている場面がある。手回しの映写機、スクリーンを見ながらのピアノ伴奏といった上映のディテールが描かれていて楽しかった。