Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『ナイスガイズ!』(シェーン・ブラック)

 

 Twitterのフォロワーさんのお薦めで、シェーン・ブラック『ナイスガイズ!』(2016年)鑑賞。子連れの私立探偵(ライアン・ゴズリング)と腕っぷしの強い示談屋(ラッセル・クロウ)のバディもの。事故死したポルノスターの捜索という依頼が、やがてアメリカの自動車産業を巻き込んだ政治スキャンダルに発展していく。コメディ色が強いけど、意外に王道の探偵もの。公開時は全くノー・チェックだったんで嬉しい。

 

 主人公はちゃんと調査してるし推理してるしボコられて地に這いつくばるし。先日見た某探偵ものよりずっと探偵らしかった。時代は1977年に設定されていて、70年代ファッションや風俗、音楽が楽しい。来る80年代のアメリ自動車産業衰退が背景に据えられていて、結末は苦い。

 

 ブラックの演出は、画面への人物や物の出し入れに独特の面白味がある。冒頭のカークラッシュから始まって、バルコニーから転げ落ちる探偵、銃の受け渡し失敗、窓を突き破って放り投げられる女の子、車の屋根に下りてくる女、転がるフィルム缶、ニクソン!等々、どれも一工夫あって、人や物が交錯するアクションで画面を活気付けている。これはなかなか。

 

 示談屋ラッセル・クロウは別人のように肥大化していて、クズ男に鉄槌を下す様は『L.A.コンフィデンシャル』で演じた役柄のセルフ・パロデイみたい。探偵ライアン・ゴズリングの軽さもハマってるし、しっかり者の娘も可愛い。続編やらないかな。

 

 シェーン・ブラックって『ラスト・アクション・ヒーロー』『ロングキス・グッドナイト』といった、90年代に大味で雑だと忌み嫌っていた作品群の脚本家なんだな。『ナイスガイズ!』の充実ぶりを見ると、演出の問題だったのかなと思う。あ、フレッド・デッカー『ドラキュリアン』もブラックなのか。