Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『恐怖のSF戦争』(ジョージ・マッコーワン)

 

 ルシア・ベルリンの短編『野良犬』に「アンジー・ディキンソン主演のSF映画」というのが出てくる。アンジー・ディキンソンといえば犯罪映画の悪女役や『ビッグ・バッド・ママ』の肝っ玉母さん、そして何と言っても『殺しのドレス』の人妻役で印象深い。でもSF映画に出ているという印象は全くないので調べてみたら、おそらくこれだろうというのが見つかった。ロイド・ブリッジス主演のTVムービー『恐怖のSF戦争』(1970年)。

 サングラスを通して宇宙人が見えるというカーペンター『ゼイリブ』のネタ元と言われてる作品らしい。原題THE LOVE WAR。愛の戦争ってタイトルがどことなくルシア・ベルリンぽい。監督はホラー『吸血の群れ』、リー・ヴァン・クリーフ主演の『荒野の七人 真昼の決闘』等を撮ったジョージ・マッコーワン。

 

 これがYoutubeに上がってるとの情報に早速チェック。対立するエイリアンのグループがあり、互いに相手を探し出しハントするといった内容。規模感としては低予算の自主映画みたいだが、意外に面白かった。

 終盤、舞台は西部劇のゴーストタウンみたいな場所に移る。『野良犬』はここの撮影現場を描いていたのだと思われる。ルシア・ベルリンも周りにいたのかと思うと不思議な気がする。アンジー・ディキンソンは事件に巻き込まれ、主人公ロイド・ブリッジスと行動を共にする女性の役。ディキンソンというと美熟女みたいなイメージがあるけれど、本作ではまだ若々しく溌剌としている。終盤の展開を見ると実に彼女らしい役柄だった。