Fool in Trance

それはあった。それは二度とないだろう。思い出せ。

『BELUSHI ベルーシ』(R・J・カトラー)

 

 アマプラにて、R・J・カトラー監督『BELUSHI ベルーシ』(2020年)鑑賞。稀代のコメディアン、ジョン・ベルーシのドキュメンタリー。ベルーシの伝記本用に行われた関係者への膨大なインタビューを主要なソースに、「常に全力疾走しか出来ない」男の肖像を描き出す。墓暴きみたいな下衆な映画だったらどうしようとおっかなびっくり見始めたが、コメントを寄せた仲間たちはもちろん、作り手の理解と愛情を感じる良い映画だった。過去のエピソードを再現するアニメパートも素晴らしい出来。60年代後半から70年代のアメリカ、という個人的に大好物の背景もしっかり描かれていて嬉しかった。

 

 TV『サタデーナイト・ライブ』で人気者となり、映画『アニマルハウス』でブレイクしたのが1978年。オーバードースで亡くなったのが1982年。享年33歳。「常に全力疾走しか出来ない」男のまるで打ち上げ花火みたいな太く短い生涯。ドラッグ依存症のエピソードは痛々しく、妻ジュディス、親友ダン・エイクロイド、共演者キャリー・フィッシャーら周囲のコメントからも混乱ぶりが伝わってくる。ジョン・ランディス(『アニマルハウス』『ブルース・ブラザース』監督)のコメントも要所に出て来る。過去のインタビューなどでお馴染みのランディスの無邪気で楽しそうな語り口が、ベルーシのドラッグ絡みで『ブルース・ブラザース』の撮影が何日か滞った話になると戸惑った口調になってしまうのが印象的。かなり深刻な状態だったのだろうなと思う。故に、ベルーシが歌うランディ・ニューマン『ギルティ』のカヴァーには泣く。

 

 映画スターのプライベートなんてどうでもいい、スクリーンで輝く姿を見ることが出来ればそれでいいじゃないかという声もあろう。自分も基本的にはそう思う。なんだけど、久々にベルーシの動く姿を見たいという気持ちに逆らえなかった。『アニマルハウス』『ブルーズ・ブラザース』で最良のパフォーマンスが記録されているとはいえ、ベルーシは作品が少なすぎる。本作ではブレイク前の映像がたっぷり見られて嬉しかった。昔見てあんまり調子が出てるとは思えなかった『Oh!ベルーシ 絶体絶命』『ネイバース』も見直したくなった。